「優之助、親丼、織音、お前たちにお殿様から命がくだった!」 「ハッ」 かかしを前に3人は膝まづき頭を下げたまま、言葉を待った。 「西田の古だぬきが慈音守様の領土を密かに狙っているという 情報が入った。 しかもa君様をも狙っていると」 「え?」優之助はaという名前に反応して、頭をあげてしまし、 それに驚いた二人も頭をあげて、優之助の顔を見た。 かかしは3人をギロリと睨み 「何を今さら驚く事があるのだ!姫君様は小さい頃がらずっと 色んな輩に狙われておったのを、殿さまが大事に大事に守ってこられたのではないか。 そして、今は慈音守様がな。 ただ、今回はあの悪名高い、西田の古だぬきゆえ どんな手段を使って攻めてくるやもしれぬと 殿様が酷く心配しておられる。 今慈音守様の所には家尊と鈍平とお手民のグループしかおらぬから、 おまえたちも行って、合流し a君様をお守りするのじゃ!!」 「御意!」 「優之助!おまえにはちょっと別の話がある。こちらへ」 かかしは他の者を帰し、優之助だけを部屋へ通した。 「ゆう…  これは父からの忠告だ… おまえは忍びだ。  よいな。おまえは忍びなのだぞ、ゆう。 姫様の弟などではない!勘違いするな。 小さい頃の戯れを 勘違いするでないぞ。 触れる事も目を合わす事も出来ぬ立場だ。よいな、ゆう 肝に命じておけ。おまえにはお手民という許嫁がおるのじゃからな! 身分をわきまえるのじゃぞ!!」 かかしは優之助の肩を力強く掴み 言い聞かせるように、何度も何度も繰り返した。 ”父上…  わかっております”  頭ではわかっておるのです… わかっておるはずなのに… 思い出すのは、姫様の恥ずかしげな笑顔… 姫様が”ゆう”と呼ぶ声… 姫様の匂い… 約束した時の小指のぬくもり…    父上…  ゆうはちゃんと  わかっております… お守りするためだけに参ります! 心の中で誓う優之助だった。