いよいよSMT本番 二人の緊張は最高潮だった。足が震え、マイクを持つ手が震える。 観客の反応はどうだろう?ちゃんと受け入れてくれるんだろうか? 二人の胸は張り裂けそうだった。  別々の位置でのスタンバイ 「チャンミナ… 頑張ろうな 」ユノはそう思い、左手に口づける。 「ユノヒョン…大丈夫だよね?僕らちゃんとやれるよね?」チャンミンはそう思い左手を 見た。   東  方  神  起   会場に二人の登場を促す声が流れる 会場に広がる赤いペンライトの光 割れんばかりの歓声と悲鳴 「ユノオッパ〜〜〜」 「チャンミンオッパ〜〜」 若いカシオペア達の叫び声 「ユノ〜 チャンミン〜〜」 日本から来た、Bigeastの叫び 沢山の歓声と叫び声が会場中に響き渡る。 二人は空からゆっくりと、ゆっくりと広い会場を見渡すように、舞っている。 ユノは一人一人の顔を見つめる様に。 チャンミンはまるで天女が綺麗に弧を描くように手を広げ、皆を見下ろしている。 空から舞いおりた東方の神 戻ってきた二人の神 そんな形容がピッタリの二人の登場だった。 二人の帰りを今か今かと待ちわびた、沢山のファン。 こんなにも沢山のファンが自分たちを待っていてくれたんだ。 そう思うと二人は涙がこみ上げた。 やれる!!二人で大丈夫!! ユノとチャンミンは互いの目を見つめ、無言で確認しあい、小さく頷く。 二人は今までの成果を十二分に発揮した。 5人の東方神起が2人になった、のではなく 新たに2人の東方神起が生まれた。 そう表現するに値する、価値ある復活だった。 やり切った達成感で一杯だった。 二人は二人のステージを終え、袖に引き上げ、誰の目をはばかる事なく、抱き合った。 … 良かった … お互いが口には出さないがそう思った。 抱き合う二人にスタッフも駆け寄る。 肩をたたき、「良かったよ!!大成功だよ!!」 涙するスタッフもいる。 社長も飛んでくる。 「ユノ!チャンミン!!!復活おめでとう!!!! 二人で大丈夫だな!これからも二人 で頑張ってくれよ!!!」そう言って、二人を抱きしめた。 「ありがとうございます!!社長!」  他メンバーとのコラボも無事に終わり、エンディングを迎えた。安堵感で一杯だった。 良かった、またここに戻れるんだ。二人は期待で胸が膨らんだ。 打ち上げパーティーでも皆が二人の復活成功を喜んでくれた。 ドンちゃん騒ぎもお開きとなり、ようやく二人の部屋へふらつく足で帰りつく。 「あ〜〜酔っ払った〜〜」二人で同時にドサリとベッドに体を投げ出す。 寝転がったままの状態で、ユノがチャンミンの手を探し、握る。 「チャンミナ〜〜良かった〜〜ほんとにホッとしたよ〜あんなに沢山のファンが待ってて くれて、お帰りー待ってたよーっていっぱい叫んでくれて」 「うん、ヒョンホントに良かった…正直あんなに待っててくれるなんて、思ってなかった よ。だから赤い光で会場が一杯になった時上から見てて涙零れそうだったよ」 チャンミンはそう言って、ユノに近づき胸に顔を埋めた。 「これで二人だけでずっと一緒に頑張っていけるんだよ、…  良かった … 」チャン ミンは手を背に回し、ギュッとしがみつく。 ユノは「そうだな…ずっと一緒に頑張れるよな…」そう言い、胸の中にいるチャンミンを 抱きしめた。 しばらくしても、そのままで何の反応もないユノに 「ヒョン… どうかした?張り切り過ぎて疲れた?ヒョンでも疲れてその気にならない事 あるんだ…  意外だな…」 「何だよ!人をドスケベみたいに言うなよ」そう言って、チャンミンの頬をつねった。 「そうだよ〜違うみたいに言うなよ」チャンミンもユノの頬をつねった。 そうして二人は抱き合い、ユノはチャンミンの髪を撫でた。 …ごめんよ チャンミナ…  おまえを抱くのが怖くなったんだ… そう思いながら…    SMTも終わり、二人での再始動が本格化し、仕事面では相変わらず、忙しい毎日だっ たが、ユノがチャンミンを抱かない日がつづき、チャンミンは心配になり、食事中にきり 出した。 「ヒョン…  どこか体の調子でも悪いの??」 「いや、元気だけど…  なんで?」 「前は仕事でどんなに忙しくても、元気だったのに…  ここんとこ…」 チャンミンはカッと顔を赤らめ、下を向いて、 「たいてい一緒にいるし、忙しくて浮気する暇もないと思うけど……だから…体の調子悪 いのかと思って…いつも何も言えずにうじうじして、喧嘩になったり、おかしくなって… またこの前みたいに勘違いで辛い思いしたくないから…」 ユノは食事する手を止めた。 恥ずかしそうに一生懸命訴えるチャンミンを見て、溢れそうになる涙を堪えて、 「チャンミナ…  ごめん  …  ごめんよ  」そうつぶやく。 「ごめんって何だよ!!何!?また テミン??」 辛い記憶が甦り、胸が痛くなる。 「違う!違うよ!そんなんじゃない…」 「じゃぁ何なんだよ!!はっきり言ってくれよ!!」 「俺はずっとおまえを守ってきたのに…なのに、こんな辛い恋におまえを引きづりこんで しまって…どうしてあの時、おまえが嫌だって言った時に我慢できなかったのかと思うと おまえに申し訳なくて…」  チャンミンはガタッと大きな音をたてて、椅子から立ち上がった。 「今さら何言ってんだよ!!!! ヒョン辛い恋って何だよ!?ヒョンは辛いのかよ!!   何だよ…  何で今更そんな事言うんだよ!!!」 「女の子と恋愛して、結婚して、子供作って…そんな普通の幸せを俺はおまえから奪って しまったんだ…」頭を抱え込み、絞り出すように、ユノは言った。 「何でもかんでも一人で勝手に責任感じて…ヒョンはいつでもそうだよ!あの時…嫌がっ たんじゃなくて…怖かっただけで…何でいつもそうやって、人の気持ちを決めつけるんだ よ!!! ヒョン…あの時何て言ったか覚えてる? おまえの好きはそんなもんなのか? 俺は全部が好きだ。おまえの全部が欲しい。 ってそう言ったんだよ… 僕すごく嬉しかった… ヒョン…  そこに未来はなかったんだね? ヒョンの言う全部の中に未来はなかったんだ… 僕は全部わかってたのに… それでもいいと… それでもヒョンについていこうって飛び込んだのに… なのに… なのに…ヒョンは今更おまえは子供つくれないから、もういらないって…そう言うんだ… ずっと一緒に歩いて行こうって… あれは嘘だったんだ… 酷いよ… こんなに好きにさせといて… いまさらそんな事いうなんて… 辛い恋だなんて… 辛い恋だなんて 僕はそんな風に思った事なんてないよ!」チャンミンの目からは涙がポロポロと零れた。 「チャミナ!!違うんだ!!俺だって、チャミナと離れたくなんかないんだ。いらないな んてそんな事思ったこともないよ!!!  でも…  」 チャンミンは部屋から飛び出した。 ユノもすぐに追いかける。 「チャミナ!待てよ!」チャンミンの腕を掴む。 「辛いんだろ!?抱くのも見てるのも辛いんだろ?だから出て行ってやるよ!見えなくな れば、辛くなくなるよ!!」掴まれた腕を振りほどき、叫ぶ。 ドン!と両手で強くユノの胸を押し、ユノは倒れた。 その間にチャンミンは家から飛び出て行ってしまった。 ユノは車の事故を思いだし、必死で追いかける。 「チャミナ!チャミナ!行くな!」 ようやく追いつきユノはチャンミンを抱きしめた。 「頼むよ、チャンミナ…行かないでくれよ…そうじゃないんだ…そうじゃないんだよ…  チャンミナ頼むよ…」 「嫌だ…  辛いなんて言われて一緒にいれるわけない…」泣きじゃくるチャンミン 「離さない、絶対にどこにも行かせない」ユノはチャンミンを抱きしめ離さなかった。