ジヘは二人の様子を見て、 「母さん、先生を呼びに行こう」と言い病室を出た。 「ユノヒョン!どこ行ってたんだよ…こんなに長い間僕を一人にして! いなくなったらどうしよう…って、ヒョンがいなくなったら僕はどうしらいいか…」 そう言って、チャンミンはまた大きな声で泣いた。 状況が理解出来ないユノだが、あまりにチャンミンが泣くので、オロオロと 「ご…め…ん…よ。  チャ…ン…ミ…ナ ご…め…ん…よ」と一生懸命にチャンミンの 頭を撫でた。  コンコンとノックをして、医師や看護士が入ってくる。 チャンミンは涙を拭い、ユノからパッと離れた。 「ユンホさん、気づきましたか?」医師が脈拍を測り、聴診器を当てる。 ユノの目にチカチカと光を当てるが、ユノはどんよりとした表情で、あまりまだ反応しない 「ここがどこだかわかりますか?」 「…………」 「お名前は?」 「…チョン、…ユンホ…」 「こちらの方は?」医師がチャンミンを指して訊ねた。 「…シム、…チャンミン…」 「ここは病院ですが、なぜあなたがここにいるかわかりますか?」 「…………」 「そうですか…意識が戻って良かったです。まだあまり興奮させないように、周りの方は あまり色々と質問しないようにしてください。 またこれからの治療方針を変えていきましょう」 医師たちが出て行き、チャンミンはユノの足元に下がり、母親とジヘが枕元に近付き ユノの手を握った。  チャンミンはそっと病室を出て、マネージャーに電話をかけた。 「マネヒョン!ユノヒョンの意識が戻りました!!はい。はい」 チャンミンはまた鼻の奥がツーンと痛くなるのを堪え、待合室に行った。 一人点滴をぶら下げたおじいさんが先にいたが、チャンミンはおじいさんだし… どうせ、自分の事など知らないだろうから…いいか…と思い 少し離れて座った。 おじいさんは入って来た、背の高い青年を穴の開きそうなほど見つめ 「あんた、韓国の歌手の人かい?」とチャンミンに聞いた。 チャンミンはこんなおじいさんも自分たちの事を知っているのか?と驚いて 「…はい、そうです」と目を真ん丸にして答えた。 「ほー日本語上手だな。同じ病室の人が噂しとったから、 もしや…と思ったんじゃ。男前だから、すぐにわかったよ。ハッハッハ」 チャンミンは照れくさそうに微笑み、肩をすくめて、頭をチョコンと下げた。 「相棒さんはどうじゃ?」そう聞かれ、チャンミンはどう答えたらいいのか返事に困った。 知らないおじいさんに答えていいものなんだろうか? そこから変な噂が広まったりしないか… おじいさんはそんなチャンミンの様子を気にする風もなく、 「テレビじゃここ毎日ずっとこの病院が映って、女の人が沢山泣いてる姿が映っとたぞ。 あんたら、人気者なのか?こんな爺さんにはさっぱりわからんが。 相棒さんは怪我したのか?何か高い所から落ちたとか何とか…もう飽きるほどテレビで 見たわい」おじいさんはチャンミンの顔を心配そうに覗き込んだ。  チャンミンはこんな見ず知らずの、自分たちの事を知らないおじいさんまでもが心配して くれているという、事実に驚き、胸を打った。 「はい、ありがとうございます。やっと意識が戻りました」 「ほーそうか、そうか、そりゃ良かったなぁー。うん、うん良かった それで、兄ちゃんも今日は顔あげて歩いてたんだな」そう言うとおじいさんは 嬉しそうにチャンミンの肩をポンポンと叩いた。 そして、立ち上がると 「誰にも言わねーから安心しな。 …  兄ちゃん、辛い時ほど顔上げてなきゃーいけねーぜ。下向いてたって 何の良い事もないからな!ちゃんとおてんとさんに顔向けて、さっきみたいな 顔して笑いな!そしたら、きっと良い事が向こうからやってくるからな! 兄ちゃんの笑顔…わしの若い時にそっくりだしよ!!ハッハッハ さてと、看護婦の姉ちゃんの尻でも触りに行ってこようか」と豪快に笑い 点滴のぶら下がったポールをガラガラと押しながら、歩いて行った。  チャンミンは嬉しい気持ちになり、廊下を歩いていくおじいさんにペコリと 頭を下げ、「おじいさん、ありがとうございます!頑張って上向いて笑います。 そして、僕もおじいさんみたいな素敵なおじいさんになります」そう思った。 「チャンミン!」と廊下の向こうからマネージャーと事務所スタッフが走って来た。 「マネヒョン!!ユノヒョンの意識が戻りました!」マネージャーは チャンミンを抱きしめ 「良かった!良かった!…やっぱりチャンミナがユノを連れ戻したんだな…」涙声で言い チャンミンの肩を組んで、廊下を歩き出した。 「で…ユノはどんな感じだ?」 「…ん〜まだ意識が完璧には戻ってない感じで、今の状況も理解できてないみたいです。 でも、自分の名前も僕の名前もちゃんと言えたし、なんかゆっくりゆっくり話してました けど」チャンミンが少し不安気に言うと、マネージャーが 「チャンミナ〜これだけ長い間眠ってたんだから。 大丈夫!大丈夫!すぐに元のように なるって!」明るくチャンミンの肩を叩いた。 病室に戻ると、ユノと母親と妹が笑顔で話していた。 スタッフとマネージャーが駆け寄り、ユノに声をかける。 その様子をチャンミンは離れた所から見ていたが、ジヘがチャンミンの近くに寄って来て 「チャンミンさん、兄さんを呼び戻してくれて、ありがとう!!早く兄さんの所に 行ってあげて。さっきから、何度もチャンミンは?チャンミンは?って聞いてたから」 チャンミンは嬉しいのと、恥ずかしさとで真っ赤になり、俯いて鼻をポリポリかいたが 静かにユノのそばに近づいた。 マネージャー、スタッフが場所をあけてチャンミンを枕元に押し出した。 ジヘが「母さん!!ご飯食べに行こう!!」とユノの手を握る母親を呼んだ。 「え?母さんまだご飯なんかいらないよ…」 「いいから!!私はペコペコなの!!」 「そんなの皆さんに申し訳ないじゃないの…ジヘ…」 「チャンミンさん、お願いしてもいいですよね?」とジヘは母親を無理やりひっぱり ドアの方へ歩きながら、チャンミンに声をかけた。 「ええ、大丈夫です。ゆっくりしてきてください」チャンミンが答え マネージャーが忘れてた!とでも言うように手を叩いて 「チャンミン!韓国の仕事ちょっと先伸ばしにしてもらったから。もう少し ここにいてもいいからな」そう言いながら、スタッフと二人で 部屋から出て行った。 「チャ…ン…ミ…ナ」  急に静かになった病室にユノの小さな声が響いた。 「ユノヒョン」ユノが片手をチャンミンの方に伸ばしたので、チャンミンはその手を つかみ、自分の頬に当てた。 「ど…こ…行っ…て…た?…」ユノはまだゆっくりしか話せない風ではあったが それでも段々としっかり話せるようになっていた。 チャンミンはユノの言葉を聞いて、少しフフッと笑い 「ユノヒョン…それはこっちの台詞だよ。ヒョンこそ長い間どこに行ってたんだよ」 「ど こ に も 行っ て な い…お ま え の そ ば に ずっ と い た」 チャンミンは自分の頬にあるユノの手のひらにキスをして 「そうだね…体はずっとここにあったもんね」 「お ま え の 声 が ずっ と 聞 こ え て た。 ずっ と 一 緒 に 歌っ て た だ ろ? 違 う の か? 俺 は お ま え と 一 緒 に 歌っ て な かっ た の か?」 苦しそうな表情になるユノを心配して、チャンミンは 「ヒョン!大丈夫!一緒にいて、ずっと一緒に歌ってたよ。大丈夫、大丈夫だよ、ヒョン 僕はここにいるから」ユノに優しく微笑んだ。 ユノは安心したように目を閉じ、疲れたのかまた眠ってしまった。 チャンミンは眠ってしまったユノを見て、不安になり、起きなかったらどうしよう…と 思ったが、まだ安静が必要だと言われた事を思いだし、じっと手を握り、ユノの顔を見つ めていた。 「茶々!茶々!どこ行くんだよ!」 「ゆう…  お別れじゃ  茶々は遠いお殿様の所へお嫁にいくのじゃ」 「おれも一緒に行くよ!茶々と一緒に」 「……  茶々もそう出来れば…どれだけ嬉しいか…でもまだおまえは子供なのだから」 「嫌だ!茶々!!俺も!俺も一緒に!!」 小さなゆうのすけがいくら頑張って走っても、籠行列には追い付かず 茶々姫を乗せた籠はドンドンと離れて行った。 「茶々!茶々!俺もきっと行くから!大きくなったら茶々のそばに行くから!茶々!」 走っては叫び、叫んでは転び、立ち上がっては又走り ゆうのすけはいつまでもどこまでも茶々の籠を追いかけた。 茶々は籠の中でずっと泣きながらゆうのすけの叫び声を聞いていた。 「ゆう…早く大きくなって…茶々のところへ…茶々のそばへ…  ゆう…」 「行くな!茶々!」ベッドで眠っていたはずのユノが突然大きな声で叫び、 起き上がろうとしたので、チャンミンは慌てて 「ユノヒョン!どうしたの?ここだよ、僕はここにいるよ!」ユノに覆いかぶさり 抱きしめた。 「大丈夫だよ…ヒョン…ここにいるから…どこにも行かないよ… ユノヒョンのそばにいるよ」  ユノは目を開け、キョロキョロと周りを見渡し、自分に覆いかぶさるチャンミンを抱き しめた。 「チャンミナ…ここはどこだ?籠に乗っておまえどこに行くの? 俺をおいてどこに行くんだよ!?」 ギュッと強い力で抱きしめるユノにチャンミンは ”ヒョンの力が戻って来た…”と思いながら 「ユノヒョン…ここは病院だよ…ヒョンはきっと夢を見たんだよ。僕はずっとここにいる ヒョンをおいてどこかに行くわけないだろ。ユノヒョンこそもう僕をおいて 急にいなくなったりしないでくれよ…」 「夢か…」ユノはしばらくボーっと考えて 「そうだな…おまえ綺麗な女の子だった…お姫様だったよ… ちゃちゃって呼んでた…」 「…それなんかどこかで聞いた事あるな…う〜んどこだっけ?思い出せないけど…」 「…チャンミナ…俺は怪我でもしたのか?なんでここで寝てる??」  ユノの様子が落ち着いてきたので、チャンミンは自分の体を起こし、ユノの手を握り 「ヒョン…ずっと熱が下がらなかっただろ?それでその菌が脳に入っちゃって、病気に なったんだよ。ずっと意識が無くて、2週間眠ったままだったんだよ…」 チャンミンは思い出すだけで辛くなり、涙が滲んだ。 「2週間…そんなに??…でも俺はずっとおまえといて、ずっと一緒に歌ってたんだけど」 「僕が歌ってる声が聞こえてたんだね… ヒョンにはちゃんと僕の声が届いてたんだね…」 チャンミンは込み上げる涙を抑えきれずに両手に握りしめたユノの手で顔を覆った。 「あ!!」とユノが大きな声をあげたので、チャンミンは顔をあげて、ユノを見た。 「コンサートは?あと、3回残ってた…」 「…中止になったよ…仕方ないよ…だってヒョン… 死ぬかもしれないって… …先生がヒョンは死ぬかもしれないって…そう言って…」とチャンミンは又言葉を 詰まらせ、涙を流した。  ユノはチャンミンの頬に手をあて 「心配かけたんだな…チャンミナ…ごめんよ…もう大丈夫。大丈夫だから」 「でもヒョン、まだ熱下がってないんだから、無理しちゃダメだよ」 涙ながらにユノに訴える。 「もう二度とあんな思いしたくない…不安で辛くて、悲しくて… どうしたらいいかわからなくて…」チャンミンの溢れだした涙は止められず… ユノはチャンミンの頭をぐいと引き寄せ、自分の肩にのせた。 頬に唇をよせ 「ごめんよ…チャンミナ……ごめんよ…」何度も何度も謝った。  3か月後、医師たちの懸命の治療と本人の強い意志、そしてチャンミンの献身的な サポートのおかげで、何の後遺症も残らず、無事に退院する事が出来た。  韓国に戻った二人は事務所が「別々の家へ帰れ!」と言うかと心配したが 病後という事もあり、何も言われずに二人の家へと帰る事が出来た。 「チャンミナ」「ユノヒョン」二人はドアを開けるのももどかしく、玄関で抱き合い 激しくキスを交わした。 「ヒョン…大丈夫?大丈夫なの??」チャンミンはキスの合間にユノの体を心配して 聞いた。 ユノはパッと顔を離して、 「何が?」と聞き、チャンミンの手を引きズンズンと寝室へ向かった。 ベッドへ倒れこみ、チャンミンの服のボタンに手をかけるユノに、チャンミンは 「ユノヒョン、待って…」と言い、体を起こした。 横になるユノの上に手を付き 「ユノヒョンが元気になったら、言おうって決めてた事があるんだ」ユノを見つめながら 言うチャンミンを又引き寄せようとするユノを止め 「聞いて…ヒョン…」指先を自分の唇にあて、それをユノの唇にあてた。 「キスしても…いい?」  ユノはチャンミンの言う意味がわからず、不思議そうな顔で チャンミンの言葉を待った。 「ヒョンの意識がない時に同じ事言ったんだ…いつもヒョンが  ”たまにはチャンミナから誘ってくれよー”って言ってただろ… …  だから  … …なのにヒョンは何も言ってくれなくて… …キスもしてくれなくて… …抱いてもくれなかった… 恥ずかしがってたり、いつでも言えるなんて思ってちゃダメだなって その時思ったんだ。 だから、ユノヒョンが元気になったら絶対に言おうって… ヒョン…いつか僕に聞いただろ? ”チャンミナはしたくないの?”って その時は恥ずかしくて、答えられなかったけど …僕だっていつも思ってるよ… …ヒョンに抱かれたいって…  抱かれて眠りたい… って ヒョンの意識がない時だって、ずっとずっと思ってたよ… ……  ユノヒョン…  僕を抱いてくれる?… 今日は僕が誘ってるんだよ…  ユノヒョン…」  チャンミンはそう言いながら顔を近づけ、くちづけを交わした。 「…チャンミナ!!!」 ユノはチャンミンを強く抱きしめた。  それからしばらくユノは活動をなるべく控え、体力の回復につとめ、 チャンミンはその間バラエティーやドラマなど精力的に頑張った。  日本の中止になってしまったコンサートの穴埋めをすべく、日本のスタッフは奮闘し ようやく、1日だけ東京ドームでコンサートが出来る事になった。 その上に全国の映画館でのライブビューイングも決定し、ファンを喜ばせた。  ユノとチャンミンのたっての願いで、中止になった分のチケットを持つファンが 優先的に東京ドームに入れるという画期的なシステムプログラムが開発され、 業界関係者を驚かせた。  コンサート打ち合わせ初日、ユノが倒れてから初めての再会であり、 皆が集まった瞬間、どこからともなく拍手が起こり 「ユノ!お帰り!おめでとう!!」と声がかかる。 ユノはうっすらと涙をにじませ、深々と頭を下げた。 「ありがとうございます。そして色々と迷惑かけて、すみませんでした」 バンマスのかきやんがユノに近づき 「何言ってるんだ!ユノ!ほんとに良かった。戻ってきてくれて嬉しいよ!!」 とハグした。 次々、バンドメンバーダンサーメンバーがユノの周りを取り囲み、喜びの声をかけた。 それを横で見ていたチャンミンも、又ウルウルと瞳を輝かせた。  コンサートの流れやダンスは同じと言う事もあり、打ち合わせは順調に進んだ。 休憩時間になり、ユノはそっとサムの所に近づいた。 「サムさん、今回TVもライブビューイングもはいるんですけど、前にサムさんが言ってた ”シアワセ色の花” あれ…見つめ合って歌ってもいいですか?」 しばらく考えたサムだったが、 「…いいよ。ユノ…好きなようにやれよ。後は俺が何とかするから… 想いを全部ぶつけて歌えよ」 「はい、サムさんありがとうございます…それと僕、最後に言いたい事があります」 「??何?あいさつまで、俺は指示してないだろ?」 「わかってます。でも…これ言うと又皆さんにまで迷惑かける事になるかもしれないし… でも今回の事で…どうしても言いたくて…」 サムはユノをじっと見ていたが、真剣な表情で頼むユノの姿に 「ユノ…お前の気持ちはわかるけど、俺にはおまえたち二人を守ってやりたいって 気持ちもあるんだ。それはわかってくれるだろ? 何を言おうとしてる?」とサムはユノの肩を抱き、誰もいない部屋へと移動した。  東京ドーム1日だけのコンサート当日 舞台裏でスタッフが円陣を組み、ユノを呼ぶと、ユノが 「待ってください…他のスタッフもみんな聞いてください」辺りに散らばっている スタッフも呼び寄せ、館内の客席以外に聞こえるマイクで 「今日のこの日を迎えられた事…本当に皆さんのおかげだと思っています。 僕は全然覚えていませんが、倒れた日から退院するまで、沢山のスタッフが心配して お見舞いに来てくださったと後でチャンミンに聞きました。 そして、僕の意識がない間、みんなでチャンミンを支えてくださったと。 本当にありがとうございました」二人で深々と頭を下げた。 そこにはいない、裏方のスタッフも皆、ユノの声に聞き入り拍手した。 「では今日1日だけなので、張り切り過ぎて、怪我のないように くいのないように頑張りましょう!!!!」 「東方!東方!東方神起ファイティン!!!!」皆がいつもより大きな声を出し、 気合いを入れた。  客席もユノが出るまでは安心できない!という風にいつもに増してザワザワしていた。 しかし、会場の照明がおちると、悲鳴に近い叫び声が響き、 会場は赤い光で埋め尽くされた。  予定通りの時間に始まり、1曲目で二人が登場すると、多くのファンが泣きだした。 「ユノ〜おかえり〜帰ってきてくれてありがとう〜」皆が口ぐちに叫ぶ。  最初の挨拶でユノはすぐさま頭を下げた。 「まずはこの前のコンサート急に中止になって、すみませんでした。 そして心配かけて… 」  ユノはぐっと言葉につまり、チャンミンも心配そうにユノを見た。 「沢山の方に迷惑をかけて… でもユノはこんなに元気になりましたーーーー!!! 皆さんのおかげですーーーー!! 今日は最後まで全力で頑張るから、みんなついてきてねーーーーー!!!」 キャー ユノー おかえりー ファンは絶叫する。 「皆さーん、おまたせしました〜チャンミンでーす。 ユノがですね…  倒れちゃってですね… 正直…ほんのちょっと  ほんのちょっとですね  ソロデビューのチャンスか!? って思いましたね」  チャンミンのブラックジョークに会場から笑いがおこる。 それではさっそく次の曲に… と言うチャンミンにお約束の「え〜〜〜〜〜〜」コールが おこるが、チャンミンは指をチッチッチと動かし 「ユノは病み上がりなんですよ。皆さんには思いやりというものがないんですね! ではそんな冷たい皆さんを無視して、次の曲です」 いつものブラックチャンミン炸裂で会場のちょっとした緊迫感もほぐれていった。 2曲、3曲と順調に進み、いよいよ ”シアワセ色の花”になった。 舞台裏で二人はパン!とタッチを交わし、その手をギュッと握った。  サブステージの中央真ん中で二人は見つめ合って、立った。 それを見たファンは少しざわついたが、二人の歌声が始まると 聞き入った。 ♪♪いつから 降ってたんだろ?   もうずっと雨の中で   それでも信じながら   歩けたのは あなたがいたから  ♪♪ …… チャンミナ…  おまえがずっとそばにいて… こんな俺のそばを離れずにいてくれたから… …だから俺たちが大好きなこの場所に …レッドオーシャンの真ん中に立っている事が出来るんだ …ありがとう…  チャンミナ … ♪♪どうして こんな僕の隣で   どうして そんな優しい顔して   これ以上 立ち止まって   あなたの笑顔を失いたくないよ  ♪♪ …  ユノヒョン… ヒョンがいつもそばにいて… ずっと守ってくれたから… …だからあの時もやめずに頑張れて… …こんなに綺麗な光の中で歌っている事が出来るんだよ …ありがとう…   ユノヒョン … いつもは恥ずかしくて、目を閉じるか、逸らすかしてしまうチャンミンも 今日はじっとユノの目を見つめ、ユノもチャンミンの目をまっすぐに そらさずに見た。 ユノは一歩進んで、チャンミンにもっと近づいた。 ♪♪ あなたを愛してるよ  ♪♪  歌いながらユノはチャンミンの方に 手を差し出した。 目に一杯涙をためた二人の顔のアップが会場の大きなスクリーンに映し出され ファンも同じように涙した。  われんばかりの拍手と共に会場が暗転し、二人の姿は消えた。 それからは二人共何事もなかったように精一杯のパフォーマンスを披露し、 長いMCも特別な事は言わずに、ライブビューイングのファンに声をかけたりした。  アンコール曲もすべて歌い切り、あっという間に3時間超えのコンサートが 終わろうとしていた。  二人は東京ドームの広い広いステージを端から端まで走り回り、深々と頭を下げて回った ”本当にありがとうございます” ”皆さんが応援してくれるから、こうやって頑張れるのです” そんな謙虚な二人の姿が、ますますファンの心を虜にした。 バンドメンバーへのねぎらい、ダンスメンバーへのねぎらい、サムへの感謝の言葉が 終わり、最後にまた二人だけになった時、少し照明が落とされた。 まず、チャンミンが 「今日は僕ら二人にとっても、ファンの皆さんにとっても特別な日になったんじゃないかと 思います… ユノが倒れ…  もう二度とここに立てないんじゃないかと、諦めかけた時もありました でも沢山の方からの、千羽鶴や励ましの手紙、メール、そんな皆さんの強い想いが 僕ら二人を支えて、またここへ…この場所へ立たせてくれたのです。 だから今日のステージは東方神起とスタッフとファンの皆さんみんなで作り上げた ステージだったと思います。 ここから見えた皆さんの笑顔が最高に素敵なプレゼントでした。 …幸せでした。  ありがとうございました!!!!!」チャンミンは言い終えると ユノを見た。 ユノもチャンミンを見て、軽くうなづく。 「まず、心配かけてすみませんでした!! 僕ね…2週間くらい意識がなかったんですよ… それでね…チャンミンやスタッフさんや家族がいくら声かけてもね、起きなかったんだけどね 僕ずっと夢見てましたよ…広い広い会場のレッドオーシャンの真ん中で、チャンミンとずっと 歌ってる夢。 僕ずっと夢の中で歌ってたですよ。 赤い光が、こっちだよ!ユノこっちだよ!って僕の進む道を教えてくれたんです。 目が覚めた時にね…チャンミンに怒られたですよ。 ”こんなに長い間、一人でどこに行ってたんだ!”って。 でもね、僕チャンミンと二人で一生懸命歌ってたと思ったから 「チャンミン!なんで怒るんだよー」ってわけわかんなかったですよ。 だからね…皆さんは僕の命の恩人なんです。 僕を助けてくれて…ありがとうございます。 ファンの皆さんは僕らの宝物です!! そして…今日のこの日のために沢山のスタッフが寝ずに準備してくれました。 入院中も僕ら二人をずっと支えてくれました。 いくら感謝してもたりません。 東方神起スタッフは僕らの誇りです!! … 最後に…  これね…  サムさんに言ってもいいですか?って聞いたら どうなってもしらないぞ!って言われました。 でも…   僕こうして元気になれたから… どうしてもファンのみんなの前で言いたい事があります」  チャンミンは驚いた表情でユノを見た。 ”何を言い出すんだ…ヒョンは?”  僕ら幼い時からデビューして、ずっと一緒に成長してきました。 二人になって…辛い時も、悲しい時も、苦しい時も二人で支え合って、励ましあって いろんな事乗り越えてきました。 そして…今回僕がこんな事になって…  チャンミンが時間の許す限りそばにいて、 ずっと歌っていてくれました。 僕らの大好きな曲を繰り返し、繰り返し… 僕はチャンミンの歌声と皆さんの光がなかったら、ここに戻る事出来なかったと思います ”ユノ!!マイクを下ろせ!!!声を通すな!”  インカムからサムの指示が飛ぶが ユノはそれを無視して、チャンミンの方を向いた。 チャンミナ…   ありがとう …  愛してるよ  … ユノの声と同時にWHYの時に使う、火柱がバーンとあがり、 パンパン!!という音と共に 金銀テープそれと一緒にハートに型どられたテープも上空から降り注いだ。 まるで、シアワセ色の花が舞うように 完  ユノは”あなたを してるよ”の所で チャンミンに手を差し出した。 チャンミンの目からは一筋の涙が溢れた。 観客も鼻をすすり、感動のうずが広まった。