コンサートツアーをあと、一か所に残したある日、 リハーサル中にサムが二人を呼んだ。 「ユノ、チャンミン、ちょっと変更したいとこあるんだけど…」 「変更ですか?」二人は驚いて、顔を見合わせた。 ツアーもあと3回で終わるという時に変更っていったい何を?? サムさんはいったい何を考えているんだ!? とサムの話を待った。 「いや、大丈夫!そんな大した事じゃないから…   この曲あるだろ?これ…客席にむかって歌ってたけど、最初から最後まで見つめあう 感じに変えよう」 「え?どうしてですか?歌詞は恋人を想う歌詞だけど、僕らはファンの皆さんへの曲だと 想って、歌おうって、ずっとそうやってきたんですけど…」 「そう、俺も最初はその方が良いと思ってたんだけど…デジタルアンケートあるだろ? あれであの曲は二人の曲だと思うから、二人で見つめ合って歌って欲しいっていうのが すごく沢山あって…それで最後の3回くらいはそうしたらどうかな〜って他のスタッフとも 相談したんだ。もうDVD撮影も終わってるしな」 「え…でも…  」ユノもチャンミンも納得いかない様子ではあったが、サムも 他のスタッフもそして、ファンまでもがその方が良いというのなら… としぶしぶOKした。 あまりにリアルに二人の気持ちとリンクしているから、二人でこの曲を見つめ合って 歌ったら感情移入しすぎるのではないか、感情が昂って歌えなくなるのではないか… そんな不安もあるが、今までも客席のファンを見ながらも心の中ではお互いを想い 歌っていたのだから、大丈夫。そんな両方の気持ちで二人は複雑だった。 リハーサルに戻るため、歩き出す二人だが、ユノは何日か前から熱が下がらず、 体が鉛の様に重かった。 そんな、辛そうなユノをチャンミンはチラチラと心配そうに見ていた。 ”頭が割れる様に痛い”  ユノは後頭部を襲う痛みに耐えながら、リハーサルを続けて いたが、ゆっくりと上がるリフトで歌っている時に、急に目の前の情景がグルグルと回り 出した。 向こう側にいるはずのチャンミンの姿が見えない。 ”チャンミナ…  どこだ…”  ユノはフラフラとバランスをくずし、リフトの端まで きた。 「ユノヒョン!!!!危ない!!!!」 チャンミンの叫び声がドーム中に響き渡る。 頭を抱えて、リフトの下に崩れ落ちるユノに、チャンミンは必死で手を差し出すが 届くはずもなく… ユノはリフトの下に叩きつけられた。 幸いそれほどの高さはなかったが、倒れたユノに意識はなく、チャンミンがいくら 呼んでも返事がなかった。 「髄膜炎です。今夜が山ですね。どちらとも言えない厳しい状況です」 医師が無機質に告げた。 「髄膜炎?」皆がユノの意識が戻らないのはリフトから落ちた事が原因だと思っていたので、 病名を告げられ驚いた。  チャンミンは日本語の病名などわかるはずもなく、周りのスタッフを見渡した。 皆一様にチャンミンの目を避け、説明しようとしない。 チャンミンは韓国のスタッフを探し、問い詰める。 「先生は何て??ユノヒョンどうして、目が覚めないんだよ!!ずいまくえんって何? 今夜が山ってどういう意味だよ!!厳しい状況っていったいユノヒョンどうしたんだよ!」 今にも泣きだしそうに、韓国スタッフをつかまえ叫んだ。 「静かにしてください!」テキパキと処置をする看護師に一喝され、皆外にでるように 言われるが、 「嫌だ!ここにいる!ヒョンのそばに!ユノヒョンのそばにいる!!」と動揺した チャンミンはベッドから離れようとしない。 スタッフ何人かでチャンミンを抱え 「チャンミン!落ち着いて!今ここにいたら、ユノもちゃんと治療出来ないから! さぁー外で待とう!チャンミン」 「嫌だ!ユノヒョン!ユノヒョン!!」泣き叫ぶチャンミンを無理に病室の外へ引っ張り 出した。 病室の外にも沢山のスタッフが皆心配そうに様子を窺っている。中には泣いている 女性スタッフもいた。 中から出てきた、普段見た事のない、チャンミンの様子に外にいたスタッフも 益々、心配を募らせた。 「嫌だ!ユノヒョンのそばに!!嫌だ!嫌だ!」と病室に戻ろうとするチャンミンを 何人かで必死で押さえ、出来るだけ遠くへ連れて行こうとするが、ユノを心配するあまり 錯乱状態のチャンミンの力は強く、中々遠くへ進めない。 それを見ていたサムが 「チャンミン!!こっちへ来い!!」と強い力でチャンミンの腕を引っ張り、 ドンドンと病室から離れる方向へと連れて行った。 最初は”ユノヒョン!ユノヒョンの所へ!”と泣き叫んでいたチャンミンだったが サムが自分の腕を掴む強い力と、何もない冷たい病院の長い廊下を進んでいくうちに徐々 に泣き止み、段々と冷静さを取り戻していった。  自動販売機のたくさんある待合所にも何人かの東方神起スタッフがいて、 サムとチャンミンが来たのを見て、驚いて近付いて来た。 「サムさん、ユノの様子は?」スタッフが声をかけるが、 サムはチャンミンをチラッと見て、小さな声で 「大丈夫!ユノは必ず戻ってくるから」そう言ってベンチにチャンミンを座らせた。 スタッフもそれ以上は聞かずに二人から離れて行った。 サムは自動販売機でコーヒーを買い、チャンミンに渡そうとするが チャンミンは頭を抱え込んで、震えている。 「チャンミン、ほらこれ飲めよ…  医者はさ、多少大袈裟に言うんだよ」 チャンミンの肩を抱き、優しく言った。  コーヒーを受け取りはしたが、開けようともせずに俯き、涙を流すチャンミンに 「なぁ、チャンミン…   ユノがさぁー… 今までおまえを一人にした事あるか? 辛い時も、 悲しい時も… あのどん底だった時だって… いつもおまえのそばにはユノがいたじゃないか… ピタリとおまえのそばにいて、 ずっと ずっと おまえの事守ってたじゃないか… だから、こんな大変な時に おまえ一人にして、どっかに行っちまうなんてこと 絶対にない!! きっとお前のそばに戻ってくるから。 な!?チャンミン… だから、信じて待とう。 泣いてたって、ユノはよくならない。 信じて待とう… ユノを信じよう…」目を真っ赤にしてサムはチャンミンの手を握りしめた。 チャンミンはサムを涙ながらにじっと見つめ、小さく頷いた。  残すところあと3公演だったコンサートは急遽中止になり、 今後の予定は全て未定と発表され、ファンは騒然となった。 連日マスコミが病院前で放送を続け、出入りするスタッフを見つけては インタビューしていた。 チャンミンもマスコミが張りつく中、病院側の配慮で関係者出入口からの許可を得て 毎日通っていた。 1週間が過ぎ、峠は越えたと医師から告げられ、皆ホッと胸を撫で下ろしたものの ユノの意識は一向に戻らなかった。 しかし、初めは上を向いたままピクリとも動かないユノだったが 最近では寝返りをうち、手を握ると微かに反応するようになり、皆を喜ばせた。 集中治療室から、個室へ移り、韓国から母親と妹のジヘも来ていた。 初めは母親と妹に遠慮して、病室に入ってもあまり近づかず、母親、妹の後ろから 声をかけて、寂しげに帰って行ったチャンミンだったが、 ある時、病室に誰もおらず、チャンミンは思わずユノのそばに駆け寄り、 手を握った。 「ユノヒョン…」ユノの頬を撫で、ぐっと涙を堪え、静かにその日あった事を 話していた。 その様子を母と妹がそっと見ていて、次の日からはチャンミンが来ると二人は ”買い物に行くので、お願いします”と出て行った。 そんな二人に感謝して、チャンミンはユノの手をさすり、毎日話しかけた。 「ねぇーヒョン、僕ら二人だって、最後は二人しかいない。ってそう思ってたけど そんな事ないよ。毎日沢山の人が病院にも、僕のとこにも来てくれるんだよ… ヒョン…僕ら二人じゃないよ…  ヒョン… ユノヒョンが戻ったら、あの曲見つめ合って歌おうよ… そう言ってじっとユノを見つめ… 小さな声で歌いだした。 ♪ 溢れだした想いが 言葉じゃ収まらなく 優しい色の泪でこぼれてく こんなにも強く こんなにも強く あなたを愛して止まないから もし心が壊れて 明日がみえなくても このまま手を握って離さないよ いつまでもずっと 永遠にずっと あなたを愛してるよ  ♪ …  ユノヒョン  …  愛してるよ…  ヒョン… 早く僕のそばに戻って来て…  チャンミンは心の中で叫んだ。 その時…  チャンミンが握りしめているユノの手が ピクリと動き、軽くチャンミンの手を握り返した。 「ユノヒョン!!ヒョン!!ヒョン!!聞こえてるの!?ヒョン!」 一生懸命に手を握り、ユノに向かって叫ぶが、その後は反応しなかった。 そこへ母親と妹が帰って来たので、チャンミンは 「今、ユノヒョンが手を握り返してくれました!! もうすぐです!きっともうすぐ目が覚めますよね!!」 母親はチャンミンの言葉を聞き、目頭を押さえ、フラフラと床に崩れ落ちた。 「大丈夫ですか?お母さん!ずっと泊まり込みで疲れがたまって来てるんですよ 今日は僕がついてますから、1日ホテルでゆっくりしてください。 ジヘさんもお母さんと一緒に行ってあげてください」  遠慮する二人を説得して、ホテルに行かせたチャンミンはユノのベッドのそばで 不謹慎だとは思いながらも、やっと二人だけの時間を持てた事を喜んだ。 「ユノヒョン…今日は僕がずっとそばにいるからね」  ユノの顔をじっと見つめ 「…ヒョン…  ひげが伸びてきちゃったね……」 チャンミンはユノの頬からそっと顔をなぞった。 「今度剃ってあげるよ…  フフ…  ヒョンのひげなんか剃るの初めてだね」 顔から唇へ指先を動かし 「…  綺麗なピンク色の唇だな… 」チャンミンは指先を自分の唇に当て 再び、ユノの唇へ戻す。 「ヒョン……  キスしてもいい?」 チャンミンは小さくつぶやき、ユノを見つめる。 …  チャンミンの頬に涙が一筋流れた。 「…いつもユノヒョンがチャンミナ…キスしてもいい? って聞いてくれたのに… 何で黙ってるんだよ…  僕から誘うなんてめったにない事なのに… たまにはチャンミナから誘ってくれよ って言ってたじゃないか…」 ベッドで眠るユノの頬に近づき、チャンミンは自分の頬を引っ付けた。 ユノの首に手を回し入れて、ギュッと抱きしめる。 「ヒョン!何で黙ってるんだよ! 又やきもち妬いて怒ってるの!? 僕が好きなのはヒョンだって…   一番好きなのはユノヒョンだって… ユノヒョンしかいらないって…    そう何回言えばわかるんだよ!… どうして、何も言ってくれないんだよ!!!」  チャンミンはユノの胸に突っ伏して、泣き崩れた。 「ねぇーお母さん、兄さん大丈夫だよね。きっとチャンミンさんが連れ戻してくれるよね」 「そうだね、きっと大丈夫…  大丈夫だね…」 「だって…  母さんも見たでしょ?チャンミンさんが来て声かけると 兄さんの顔が上気するんだよ…表情は同じでも 何かパッと明るくなるの… ねぇ、母さんも見たでしょ?」 「最初は偶然かと思ったけど、毎日チャンミン君が来て、声かけると顔が変わったね… 母さんもそう思ったよ…」 「ちょっと前にね…兄さんが、ジヘ…俺結婚しないから…おまえに迷惑かけるかもしれなくて 申し訳ないけど…どうしても譲れないから…自分に正直に生きるって決めたから… ごめんよ。  って私に頭を下げたの… 私兄さんはスターで人気商売だから、それで結婚しないって言ってるんだなって その時はそう思ったんだけど… でも…そういう意味じゃなかったのかも… …兄さんはもうちゃんと一番大切な人見つけてたんだね…」 「ジヘ…  それどういう意味なの?」さすがに母親にはそこまで理解できず、 不思議そうな顔で娘の顔を見た。 「母さん、兄さんが目覚めたら、何言っても許してあげてね… 私が可愛い孫いっぱいつくるからさ」母親の不思議がる顔を見て、ジヘは 「兄さん…早く元気になって戻って来てね!私が絶対に味方になってあげるからね!」 そう心に誓った。  病室のドアをコンコンとノックする音が聞こえ、チャンミンはハッと起き上がり ベッドから慌てて離れた。 涙のあとを見られまいと、ドアに背を向ける。 「点滴交換の時間です」看護師がテキパキと処置をして、何も言わずに出て行こうとする のを止め、チャンミンは 「あの…いったいいつになったら目が覚めるんでしょう?」とすがる様な表情で看護師に 訊ねた。 「すみません…それは私ではわかりません…先生でないと…でも、何日もたって 意識が戻る事はよくある事なので、諦めずに声をかけてあげてください。 脳を興奮さすのはよくないので、静かに穏やかに話しかけてあげてくださいね」 看護師は優しく答えた。 チャンミンは 「そうですか…わかりました…頑張って話しかけます。 …次の点滴交換は何時くらいですか??」と聞き 「そうですね…だいたい3時間後くらいです」看護師は時計を見て答え 病室を出て行った。 ”ユノヒョン…3時間は邪魔されないよ…”チャンミンはまたユノのそばに顔を近づけた。 「ヒョン…  この前サムさんが急にあの曲見つめ合って歌え!って言ったのは スタッフから僕らへのプレゼントなんだって、誰かが言ってるの聞いちゃったんだ。 皆僕らの事気づいてて、知らん顔しててくれたんだよ… ヒョン…みんな僕らの事認めてくれたんだよ。 ね… ヒョン… もう何も心配いらないよ…あとはヒョンが目を開けて ”チャンミナ”ってそう言ってくれれば、それだけでいいんだよ」ユノの頬をなでつづけ ながら、話しかけた。 「あ、そうだ。新曲の歌詞もらったんだ。 これもさ…僕らの事考えて書いたって言ってくれたよ」楽譜を持ってベッドのそばに 戻ると、ユノは寝返りをうって、チャンミンに背を向けている。 「なんだ…ヒョン…そっちむいちゃったの?」顔が見えなくなり、つまらなさそうにする チャンミンはしばらくユノのつむじやうなじを指先で撫でていたが、パッと時計を見て ”まだ時間あるな… いいかな…”とおそるおそるユノの布団に潜り込み、ユノの背中に ピタリと寄り添った。 「あ〜やっぱり落ち着く…ヒョンの匂い…」首すじに鼻を近づけて、ギュッとユノの体を 抱きしめた。 「ユノヒョン…まだ起きないの?…ねぇ…ヒョン…いくら疲れたっていっても 眠り過ぎだよ…ヒョン…  早く起きてくれよ…」チャンミンはまた泣きそうになるのを 堪えて、新曲の楽譜を取り、歌詞をユノの耳元で囁いた。  ”喜びも痛みさえも 分かち合って愛に気づいた 君のために生きる事で 僕のすべてが意味を持った 愛をもっと 愛をもっと 愛をもっと ここに呼んで 悲しいこと 嬉しいこと すべてのこと 繋がるように 手を握って 手を繋いで 君がもっと笑えるように この世界に生まれてきて 良かったねと言えるように もしこの先 君を一人にさせてしまっても 僕の心が どこか消えてしまうわけじゃないよ もしこの先 君が大事なものを見失っても そこにまだある 僕の愛に気づいてほしい 信じたこと 誓ったこと 願った事 君への全て 風に乗せて未来へ運ぼう 君が受け取れる日まで 愛がずっと 愛がずっと 愛がずっと 響くように 君の声と僕の声と 二人の声 重ねようか 雨の日にも 嵐にも 辛い時も 負けないように この世界のどこまででも この愛が届くように” …これも素敵な歌詞だね… どう?ヒョン…気に入った?後ろからユノの頬にキスしながら聞いた。 ユノの指に自分の指を絡め 「なんか眠くなってきたよ…ヒョン…」 ユノの広い背中に顔を埋め、チャンミンはうつらうつらと心地よい眠りに入って行った。 しばらくして、チャンミンがはっと気づくと、ユノの顔が前にあった。 そして、ユノの腕がチャンミンを抱いている。 「ヒョン!ユノヒョン!気づいたの?ヒョン!」と必死で声をかけるが、相変わらず ユノの反応はなかった。 「…ヒョン…何だよ…もったいぶって…」ツンと鼻の奥が痛くなる。 時計を見ると、点滴交換の時間に近づいていた。 「はぁー」と深いため息をつき、ユノの腕を自分の体からそっとはずし、手を握りしめた ユノの顔を見つめ、またため息をつく 「ふぅー…ユノヒョン…」その手を離し、ベッドから出ようと背を向けた瞬間 「… チャ …」小さな声が聞こえた。 「え!?」すぐさま振り向き 「ヒョン!!」と叫ぶ。しかしユノは声を出した気配もなく、じっと目を閉じている。 「ヒョン!ヒョン!僕だよ!チャンミナだよ!!ヒョン!」 ”聞こえた…今確かにヒョンが、チャンミナ…って言いかけてた…” コンコンと部屋をノックする音が聞こえ、チャンミンは慌ててベッドから降りた。 「今!声がしたんです!まだ何の反応もないんですけど、確かに声がしたんです」 看護師がそれを聞き、ユノの肩を叩き、 「ユンホさん、ユンホさん、聞こえますか?ユンホさん!」と声をかけるが、 やはりまだ反応しなかった。 「もしかしたら、チャンミンさんの声には反応するのかもしれませんね。 気長に声をかけてあげてくださいね。きっともうそこまで帰っていらしてますよ!」 看護師はチャンミンを見て、優しく微笑んだ。 看護師がバタンとドアを閉めてすぐにチャンミンはユノのそばに駆け寄り ユノの胸に耳をあて 「そうだよ!ちゃんと大きな音で心臓がなってる。 永遠に一緒だって ずっと二人でいこう って おまえと二人でどこまでもずっと って ユノヒョンがそう言ったんだから。 ヒョンはまじめで言った事は絶対にやり遂げる人なんだから ヒョン!!そうだよね!!」 チャンミンは人差し指でユノの胸をトントンと叩き、睨むように見つめた。 しかし、チャンミンがいくら怖い顔をして睨んでも、ユノの反応はなく 何度か寝返りを繰り返すだけだった。 「もうすぐお母さんたちが戻ってくる時間だよ… ヒョン…  僕一度韓国に帰らなきゃいけないんだ… 合間見つけて、こっちに来るけど… いつになるか… ヒョンが戻ったら、すぐに活動再開できるように、頑張ってくるよ。 だから、ヒョンも頑張って早く起きてよね」 握りしめる手の力を強めた。 そして、刺激を与える様に、手を握る力を強めたり、弱めたりしながら 耳元で歌った。 ♪ 急にこの世界が昨日と違ってても、君がいればそれだけで また奏でられる DUET 忘れないで 忘れないで 僕は君が好きなんだ とわと書いて とわの愛で守りたいと知ってよ 愛してるよ 愛してるよ 全部君にあげるんだ 僕のそばにおいで ♪ コンコンというノックと同時にドアが開く。 チャンミンがユノから離れ、握っていた手も慌てて離した瞬間 ユノの手がチャンミンの手を追いかけ、ギュッと掴んだ。 ドアの方を向いていたチャンミンはユノの方を見た。 ユノが手を伸ばして、チャンミンの手を握っている。 「ヒョン!」チャンミンは大きな声で叫び、ユノに近づいた。 ユノの瞼がゆっくり、ゆっくりと開く。 病室に入って来た、母と妹も慌てて、ベッドのそばに近づく。 「ユノ!!」「オッパ!!」 ゆっくり、ゆっくりと開いたユノの目はまだぼんやりと焦点が合っていない様に見えた。 「ユノヒョン!!気づいたの!?」チャンミンは母親や妹がいる事も忘れ、 必死でユノの手を握りしめて、顔の近くで声をかけた。 「ユノヒョン!ユノヒョン!!」泣き声に変わっていくチャンミンの呼びかけに ユノの口がゆっくりと開き、手を伸ばしてチャンミンの頬に触れ 「チャ……ン……ミ……ナ…」かすれた小さな声で、途切れ途切れにゆっくりと言った。 チャンミンは”ワァーン”と小さな子供のように泣き、ユノの胸に覆いかぶさった。 母親と妹も二人で抱き合い、泣いている。 ユノは泣き叫ぶチャンミンの頭を撫で、 「ど……う……し……た?…」とゆっくりゆっくりと訊ねた。 「ヒョン!!ヒョン!!ユノヒョン!!」