"わかってる…頭ではわかってるんだ…。チャンミナに当たるのも、八つ当たりだって… だけど…イライラする…イライラするんだよ…” ユノはイライラと足をゆすり、窓の外に顔を向け、黙りこくっていた。 ”何だよ…突然その態度はおかしいだろ!いったい僕が何したっていうんだよ。 ユノヒョンは何を急に怒ってるんだよ!わけわかんない” チャンミンはイライラするユノをチラッと見ながらも、黙ったままそっぽを向いていた。 「着きましたー。お疲れ様でした。明日は1日オフですから、もしどこかへ出かけるなら 連絡下さい。お願いします」ペコリと頭を下げ、新しい若いマネージャーがドアを開けた。 「はい、了解です。今の所予定はありませんが、何かあれば連絡します」ユノはいたって 普通にマネージャーに答え、足早にマンションの中に入って行った。 チャンミンも「お疲れ様です」と答え、ユノを追いかける様に入った。    部屋に入り、ユノは水を取り出すと、ゴクゴクと飲み干し、ドサリとソファに腰をおろし た。  チャンミンはその様子を目で追いかけ、ユノの正面に座った。 「さぁ、二人きりになったよ、ヒョン!何!?何なのさ!いったい何をそんなにイライラ してるんだよ。せっかくライブもうまくいって、僕は凄く気分良かったのに!!」 「フン!楽しそうだったもんな…」ジロリとチャンミンを見ながら、ユノが吐き出すよう に呟いた。 「そうだよ、楽しかったよ!!ユノヒョンだってステージでは楽しそうにやってたじゃな いか!!」 「……… 」”演出だってわかってる… ステージの上だけだってわかってる”ユノはイ ライラする気持ちを言葉に出せずに立ち上がり、正面に座るチャンミンを押し倒し、馬乗 りになった。 「何するんだよ!!いきなり!!やめろよ!!」チャンミンはキスしようと近づいてくる ユノの顔を避け、横を向き起き上がろうとするがユノがチャンミンの両側に手をついてい るので、どうする事も出来なかった。 「ヒョン!!そんな怖い顔して怒ってるくせに、何だよ!ちゃんと理由を言えよ!」 「……  なんで ……」小さな声でユノが口を開いた。 「…  なんで おまえ  カズさんとばっかイチャイチャ絡んむんだよ!!!!!」 「ハァ?何??カズさん!?」口の端にバカにした笑いを浮かべ、 「ヒョン!そんな事でこんなに怒ってんの!?…  おかしいんじゃない??」 「あれ… サムさんに言われたのか!?」 「あれって何だよ」 「ソロだよ!ソロ!!」 言ってはいけないという気持ちのタガが外れ、ユノの嫉妬心が溢れだした。 「何でカズさんとばっかり絡んでるんだよ!他にもバンドメンバーいるのに」 「パフォーマンスじゃないか!!そんな事ユノヒョンだってわかってるだろ!」 「に、したっておまえ、今日のはやりすぎだろ!?」 「テンション上がってるんだし、パフォーマンスにやりすぎなんてあるのかよ! ユノヒョンだって、ステージではいつもやりすぎくらいにやってるじゃないか! 僕だって、いつもいつも辛い思いして、ずっと我慢してきてんのに!ヒョンに負けないよ うにって、頑張ってやってるのに!! …  だいたいヒョンは勝手なんだよ。自分がどれだけ僕をやきもきさせてるのか考えた 事あるのかよ!」チャンミンの必死の反撃にユノの力が緩み、それを感じたチャンミンが ドン!と力一杯ユノを押しのけた。 ブーブーブーブー チャンミンの携帯が鳴った。 「どけよ!ヒョン!!」怖い顔で怒鳴るチャンミンにおずおずと従い、ユノはチャンミン から離れた。 「もしもし、… あ、はい じゅんぺいさん?今日はどうもありがとうございました。 … はい、今からですか?」チラッとユノを見ると、両腕をクロスさせて、×印を作って いる。  しかし、チャンミンはそれを無視して 「ちょうど、明日が休みなので、今から行きます。はい、はい。わかりました」 「チャンミナ、今から行くのかよ!?こんな時に」とユノが言うと 「行った方がいいって言ったのはユノヒョンだよ!もう忘れたの!?それにこんな時にって 言うけど、おかしくしたのはユノヒョンだろ!?僕は頑張ってライブ成功させたと思って 喜んでたのに」チャンミンは言い返しながら、出かける準備をして、マネージャーに連絡 をいれた。  そして、ユノを見ずに 「じゃぁ行ってくるから…」そう言って、玄関の方へ歩き出した。 「待てよ」チャンミンを追いかけ 「チャンミナ…  わ … 悪かったよ」言いにくそうに言った。 それでもまだ、チャンミンはユノを見ずに 「…… 行ってきます… 」と言い、部屋を出た。 カランカラン…溝端淳平の指示した店へ行くと、すでに大方のメンバーが揃い、いくつか のテーブルに分かれて座っていた。 「遅くなってすみません」 淳平のいるテーブルに行こうとしたチャンミンに 「チャンミン!久しぶり!!こっちこいよ!」とすっかりお酒が入り、上機嫌の妻夫木と 浅野が呼んだ。 「はい、ブッキーさん、浅野さんご無沙汰しておりました」流暢な日本語でチャンミンが そう言うと、 「ハハッ相変わらず、律儀な奴だな」浅野が妻夫木の方により、チャンミンは浅野の隣に 座った。 「チャンミン、今日コンサートだったんだって?じゅんぺいがすげーカッコよくて、すげー 人気だって、驚いてたぜ」妻夫木にそう言われて 「いえ、そんなこと…じゅんぺいさんが見に来てくださって嬉しかったです。男性の方 少ないから」 「そうそう、まわり女ばっかりだったって、喜んでた」笑いながら、浅野が言う。 そんな話や監督にいびられた話などで盛り上がり、チャンミンはすすめられるままに飲ん でいるうちに、段々と酔いがまわってきた。 「チャンミン!もっと飲めよ!」浅野がドンドンすすめる。 「はい!」ニコリと笑いながら返事をすると 「おまえ、ほんと可愛い顔してんなぁー。肌もピカピカして…女の子みたいだな。  これか??」おかまのポーズを手のひらで作り、チャンミンの肩に腕を回した。 チャンミンは真っ赤になって 「違いますよー冗談やめて下さいよー浅野さん」押しのけるわけにもいかず、そのまま じっとしていると 「わぁーかーわーいー。真っ赤になってるよ。そそられるなぁ〜ハッハッハ」 周りにいる皆も一斉に笑った。 が、チャンミンだけは顔がひきつり ”ヒョン…  どうしよ…  ”と不安になった。 「ほら、飲め!ほら飲め!」と飲まされ続けるうち、チャンミンはついにウトウトしだし 浅野の肩にもたれる様に眠りに落ちてしまった。 「おい、おいなんだ、こいつ…  食っちゃっていいのかー!?おーーい、じゅんぺい! こいつお持ち帰りしちゃって大丈夫なのかー?」 大きな声で違うテーブルに座る淳平に聞いた。 淳平と同じテーブルにいたメンバーも浅野の方を向き、浅野の肩にもたれて眠る チャンミンを見て笑い、 「浅野さん!気持ちはわかりますけど、浅野さんそっちじゃないでしょ!? てか…どっちもオッケーなんすか!?」 「違うよ!違うけど、なんかこいつならいけそうな気がする」と皆の笑いを誘う。 「やめてくださいよー浅野さん、東方神起のリーダーめちゃくちゃチャンミンの事 大事にしてましたよ!!! 今日なんか、俺挨拶行ったら、飛んで来て ”うちのチャンミンがお世話になりました”なんて言われて、思わず夫婦かよ!! って突っ込みいれそうでしたよ。それに顔はニコニコ笑ってるんですけど、目が ”こいつに手出すなよ!”みたいな目でしたよ」溝端が思い出すように頷きながら言う。 「なんだ…  やっぱそうか… だからこいつ、こんなにつやっぽいんだな」 浅野はそう呟き、何かを思いついたように 「なぁ!みんな!!賭けしようぜ!!」そう叫んだ。