「ユノヒョン、もう1軒行きましょうよー…ソンミンヒョンも 行きますよね?」 付け足しのように誘われた事にムッとしたが、ソンミンも 「ユノ、久しぶりにパーーーっと行こうよ」とユノを誘った。  ユノは迷ったが、チャンミンのいない部屋に一人で帰る気にもならず、 「そうだな… 久しぶりに行こうかな…」 そう言って、3人で歩き出した。  ソヒョンと別れたチャンミンは …ヒョン…テミンと一緒に行ったんだろうな…俺も行きたい!なんて言えないし、ヒョン に行くな とも言えないし…もし一緒に行ったとしても、またテミンがヒョンにベタベタ するとこ見てるの辛いし… フーーーッ  ヒョンもヒョンだよ…嬉しそうな声出しちゃってさ…楽しそうに笑って、テミンの事見 てさ…離れてくれればいいのに…ピッタリひっついてさ…    胸が痛いよ… ヒョン  チャンミンは左手の薬指を触った。 ケビンの事があってから、二人共指輪出来なくなっちゃって… そういえば、ユノヒョンが怒った顔して見てたって、何でヒョンが怒った顔してたんだ?  どこへも向かえず、一人雑踏を彷徨うチャンミンだった。  テミンとソンミンと3人でクラブに来たが、ユノは今日のチャンミンのソヒョンに対す る行動を思いだし、重い気分だった。 …チャミナやっぱり女の子の方がいいんだな…ソヒョン可愛いし、優しいし、まじめだし チャミナ…好きになったんだな。 前から好きだったのかな…俺の事好きだって言ってたのは… 気の迷い? あーーーーーーーーーイライラする。 「ユノ、せっかく来たのに、全然楽しそうじゃないな。どうしたんだよ?チャミナの事が 気になるのか?大丈夫だよ。あいつは頭いいんだから、下手な事はしないよ」 「あーすまんソンミン…そうだな、俺が心配したってしょうがないよな」ユノはそう言っ て自分の気持ちを誤魔化した。  ソンミンがトイレに行くと言って、席を外した。 完全個室のVIPルームにテミンとユノの二人きり、テミンが即座にユノの隣に詰め寄り 「ユノヒョン!」そう言うと、キスをした。  ビックリしたユノはテミンを離し、「何だ?どうした!テミン!酔ってるのか?」 「酔ってるけど、ちゃんと正気です!気づいてたでしょ?僕の気持ち…」テミンはそう言 うと愛しそうにユノに抱き付いた。 「え?いや…  気づいてた って言われても… 可愛い後輩だとしか思ってなくて…」 「僕ずっとユノヒョンが好きで、事務所に入った頃から好きで好きで…」 テミンは泣きそうな声でユノの胸に顔をうづめて、告白した。 「ユノヒョン…お願いだから気持ち悪いなんて思わないでください…」ついにはテミンは 泣きだした。 「テミン、気持ち悪いなんて思わないよ…でも、ほらソンミンがすぐに帰ってくるから…」 ユノはそう言って、優しくテミンを離し、指でテミンの涙をぬぐった。 髪を撫で「泣いてちゃソンミンにおかしく思われるよ」 「ユノヒョン、僕の事嫌いですか?」 「嫌いなんかじゃないさ、かわいい弟だよ」 「じゃぁ、じゃぁ… ユノヒョンお願いです…」 「ただいま〜」 ソンミンが明るくおどけた調子で入ってきた。 「おいおい、何だよ!テミン!おまえはほんと油断も隙もあったもんじゃないな!またユ ノに引っ付いて! ユノ!もうこいつおまえのペットにでも何でもしてやれよ!」 何も知らずにそう言うソンミンの言葉に二人はドキっとして、引きつった笑いで 「何バカな事言ってんだよ、ソンミン。テミンだってほんとは可愛い女の子が好きに決ま ってるじゃないか!」とテミンの肩を揉むような仕草でソンミンに言った。 「な!?テミン」テミンの顔を覗き込み、同意を求めるユノにテミンは俯いたまま、コク リとうなづいた。 「……まぁいいけどさ!!!もっと飲もうぜ!」とソンミンは飲み物を注文した。  イライラと街を彷徨うチャンミンはハッと我に返り 「やばい!こんなとこでウロウロしてて、誰かに見つけられたら大変な事になるとこだっ た。…仕方ない…帰ろう…」タクシーを拾い行先を告げる。  携帯を取り出し、ユノのアドレスを開く。が、しばらく考えてやめる。また取り出して はやめる。それを何回か繰り返した後、 「全く!そんなに考えたって仕方ないのに!」と一人つぶやき 「帰ってる?」それだけを打って、送信した。 すぐに返事がくるだろうと、携帯を握ったまま待つが、中々返ってこない。…そのまま家 につき「無視かよ…」と灯りのない部屋を見上げ、ハァーと深いため息をつき、エレベー ターに乗った。 「返事くらいくれたっていいのに…なんで返事出来ないんだ?」  チャンミンの心配はドンドン悪い方へ悪い方へと広がっていった。部屋に入り、灯りも つけずにソファに腰を下ろす。  朝出かけるときは二人で楽しく、頑張ろう!って言いあってたのに…1日でこんなに気 分がかわるもんなんだな…どこでどうおかしくなっちゃったんだろ?…  あの時拗ねたりしないでヒョンと一緒に行けば良かった… チャンミンは重苦しい不安に囚われ、身動きが出来なくなった。 フラフラに酔ったソンミンをテミンと二人で抱え、3人でタクシーに乗る。 まずソンミンを送り、テミンとユノの二人…相変わらず、ピタリと引っ付いて座るテミン … 同じ末っ子でも、恥ずかしがりやのチャミナとえらい違いだな。  離れないユノを確認して、テミンはユノの手をとり、指を絡めた。ユノも拒まず、手を 握り返した。  ユノを見つめるテミンの表情が嬉しそうに輝き、なおも体を寄せ、小さな声で 「ユノヒョン… このまま帰りたくないな…」 「ダメだよ!テミン!何言ってるんだ!遅いんだから帰らなきゃ!」 「もう子供じゃないんですよ… ユノヒョン…」ユノが離そうとした手をしっかりつかみ 離さないぞという様に両手で握りしめた。 「お客さん、着きましたよ!」 運転手の声に驚く二人。  ユノは内心ホッとした。このままテミンに押し流されそうになる、自分に自信がなくな っていた。 「じゃぁテミン気をつけてな」そう言って、ユノがドアを閉めようとした瞬間、テミンが フラフラとよろけて、地面に座り込んだ。 「運転手さん、すみません、ちょっと上まで送ってくるからこのまま待ってて貰えます か?」ユノはそう声をかけて、車から降り、テミンを引っ張って起こし、マンションの方 に歩き出す。 「フラフラじゃないか…テミン…随分飲んでたもんな」 「ユノヒョンと一緒だから、嬉しくてつい」と笑ってユノの方を見る。 「テミナ…」思わずそうつぶやくユノに、テミンはパッとユノに抱き付き 「ユノヒョン!嬉しい!初めて僕の事テミナ…って、テミナって呼んでくれた!ずっとユ ノヒョンがチャンミンヒョンの事、チャミナって呼ぶのが羨ましくて…」  少し涙声で言うテミンが愛しく思え、ユノはマンション入り口横の陰にテミンを引っ張 り、キスをした。  テミンは跳ねる様にユノの首にしがみつき、ユノのキスに応え、もっと、もっととねだ る様に舌を絡めた。  深夜の静寂の中、二人が交わすキスの音だけが響いた。 しばらく交わしたキスの後 「ごめん、テミナ…こんな事するつもりじゃなかったのに…」 「ユノヒョン!どうして謝ったりするんですか、謝らないでください!謝ったりしたら、 間違いだったって言われてるみたいで、嫌です!」すがる様に見つめるテミンにユノは言 葉が出なかった。テミンを抱え、エレベーターに乗せ、 「あとは帰れるだろ?」と逃げる様にして、エレベーターのボタンを押した。  テミンは再びドアを開け、 「ユノヒョン!また逢ってくれますよね?」 しばらく考えるユノの頭にソヒョンを引っ張って店を出て行った、チャンミンの姿が浮か んだ。 「……   ああ、 連絡するよ  ……」 「ユノヒョン!嬉しいです!待ってます。ずっと待ってます」  弾んだ声だけを残し、エレベーターは上がっていった。 「ハァー  …」ユノは待たせていたタクシーに乗り込み、深いため息をついた。 おもむろに携帯を取り出す。 「あ、チャミナからメール来てたんだ…  しまった…3時間も前だ…」 あれからチャンミナどこか行ったのかな…いやまじめなソヒョン相手だもんな。送って 行っただけだよな…  朝出かける時は嬉しそうに俺の顔を見て笑ってたのに…チャンミナ…何だよ!いったい 何なんだよ!!1日でいったい何が変わっちまったんだよ!!…  チャンミナ  …  チャンミンはソファに座ったままユノを待ち、待ちくたびれて寝てしまっていた。 ユノはそっと部屋に入り、真っ暗な部屋の灯りをつけた。 「〜〜ん?〜〜」ソファで眠っていたチャンミンがまぶしそうに目を開き 「ヒョン??」と聞いた。 「ああ、チャンミナ…寝てなかったのか…メール気づかなくてごめん」 チャンミンは立ち上がり、時計を見て 「遅かったね…」それだけを言って寝室へ消えた。  ユノはもっとちゃんと話たかったが、チャンミンがすぐに消えてしまったので、諦めて 少し遅れて寝室に入った。  すっぽりと頭まで布団をかぶり眠るチャンミン。 ユノはその横に潜り込もうかと思ったが、どうしてもソヒョンを見つめるチャンミン、 ソヒョンの手を引き出て行ったチャンミンの姿を思い出してしまい、自分のベッドに入っ た。