「すまない、チャンミナ…」 ギュッと抱きしめ、何度もそう言うユノに、チャンミンは絞り出すように 「ヒョンのせいじゃないよ…」そう言った。 まだ微かに震えるチャンミンを抱き、ユノの胸は押しつぶされそうだった。 「チャミナ… 大丈夫だったんだろうか?俺は間に合ったんだろうか?」そう思い、口に 出して、聞きたかったが震えるチャンミンの気持ちを考えると、黙って抱きしめる事しか 出来なかった。 「ヒョン… 早く帰ろう …」 「ああ」  二人はタクシーを拾い、二人だけで家路に着いた。  車の中で恐怖心が治まってきたチャンミンは、段々と怒りでイライラしてきた。 … ちくしょー もっと力があれば、あんな奴押しのけられたのに!ヒョンみたいに合気 道でも習ってれば、やっつけられたのに!!うー腹が立つ!それにしても、ヒョンカッコ よかったなぁー、一発であんなでかい奴ノックダウンさせて…恐怖も忘れて、見惚れたよ まじカッコいい…そういえば、あいつヒョンの将来がどうなってもいいのか!みたいな事 言ってたけど…ヒョン僕の為にあんな事しちまって、大丈夫なのかな…  チャンミンがそんな事を考えているとは知らず、イライラと考え込む様子のチャンミン を見たユノは  …ショックだったよな…そりゃあんな大男にのしかかられたら、いくら 男だっていったって、怖かっただろうな…  可哀想に …  ユノは運転手に見えない所でチャンミンの手を握った。  家にたどり着いてすぐ、シャワー室に駆け込むチャンミン…それを悲しい目でみつめる ユノ…  しばらくシャワーの水音だけが響いていたが 「ヒョン!!ヒョン!!」 そう中からチャンミンが叫んだ。 ユノはすぐさまシャワー室を覗き、 「どうした?チャミナ!」心配そうに尋ねる。 チャンミンは服を着たままのユノに構わず抱き付き 「ヒョン!腹が立つ!あいつ許せない!」ユノの首にギュッとしがみつき、そう訴えた。    ユノはドキっとした…やっぱり間に合わなかったのか…そう思い、チャンミンをきつく 抱きしめ返す。 「ヒョンが一番好きっていってくれたとこに、跡つけてるんだ…ヒョンにだって付けさし たことなかったのに…いくらこすっても消えないんだ!」  チャンミンにそう言われ、首から肩のラインを見ると、いくつかの赤い印が残されてい る。  カッと血が上ったユノはチャンミンの綺麗な首すじの赤い印に、強く吸い付いた。  痛いくらいに吸い付かれたチャンミンは 「消して!ヒョン!あいつを消してくれよ!ヒョンで消して!」 そう叫ぶと、嫌な血の味が残る唇をユノの唇に押し付けた。  シャワーでビショビショになりながら、激しく抱きあう二人  シャワーとユノで気持ちの悪いケビンの息使い、唇の感触を流し去ろうとチャンミンは 必死でユノを求めた。  ユノはチャンミンの上に残るケビンを消してしまおうと、荒々しくチャンミンを攻めた。 ベッドに横たわる二人… 「ヒョン…飛んできてくれてありがとう…あいつ、倒してくれてありがとう、もうちょっ と遅かったらと思うと、ゾッとするよ…」そうユノを見て言うチャンミンに 「え?チャミナ…俺、間に合った?あの…大丈夫だったのか?」言いにくそうに聞いた。 「あ、ヒョンごめん。言ってなかったね…大丈夫、キスされたけど、唇噛んでやったし、 いろんなとこベタベタ触られたけど、ヒョンの声が聞こえて…それで終わり…ほんとにあ りがとう」 「チャミナ〜そうだったのかー良かった。さっきあんなに嫌がってたから、てっきり…そ うか…大丈夫だったのか…良かった。ここももう全部俺だから、これは全部俺のものだか ら…これまでも、これからもずっと」  ユノはそう言って、チャンミンの首から肩を指でなぞった。 「その代わり明日は襟の高い服着ろよ」チャンミンの首にも大量についた、自分が付けた 印を撫でた。  そして、二人でおでこを合わせて、笑った。 「付け過ぎだよ、ヒョン」笑顔で言うちゃんみんに、ユノは少し心配顔で 「チャミナ…ショックだったろうけど、早く忘れちまえよ」そう言った。 「ヒョン大丈夫だよ。何もなかったんだし、腹が立つけど…もう全部ヒョンが綺麗にして くれたから」 あまりの可愛い台詞にユノの気持ちがまた昂った。  そんなユノの気持ちに気づかず、チャンミンは 「ヒョン…仕事に影響しないかな…事務所に怒られないかな…倒しちゃって…」 「大丈夫!チャンミナは心配しなくて大丈夫!専務にも言ったし…何とかしてくれるだろ」  専務何とかしてくれるかな… と内心では少し不安になったが、ユノはチャンミンに心配 かけまいと強い口調でそう言い切った。  その時チャイムが鳴った。 ピンポンピンポンピンポン  かなり慌てた様子だ。 モニターを見るとマネージャーが立っていた。 「しまった!!!!マネさんに連絡するの忘れてた!」ユノは慌てて服を着て、 「チャンミナ出てくるなよ!」とチャンミンにそう言い玄関に向かった。 鍵を開けると、血相を変えて、マネージャーが入ってきた。 「ユノさん!帰ってたんですね!?チャンミンさんも一緒ですよね!?どっちに電話して も全然出ないから、みんな心配してたんですよ!ちょっと専務に電話します」 「あーすまない」ユノは恐縮した様子で言った。 マネージャーは専務に電話をかけて、二人が部屋にいた事を報告すると 「はい、わかりました」と言って 「ユノさん専務です」と電話を渡す。 「もしもし、専務、すみませんでした。連絡しなくて」 「ユノ…チャンミンは大丈夫か?」 ユノはそう聞かれて、何と答えたらいいのか悩んだ末 「少しショックを受けて、寝ています」 「ユノ…  はっきり聞くけど…  チャンミンあいつにやられたのか? おまえ、間に合ったのか?どっちだ?」  ユノはチャンミンの首すじにのこっていた赤い印が思い浮かび、一瞬血が上ったが 「いえ、大丈夫です。チャミナは汚されてなんかいません!!」そう怒鳴った。 「そうか…良かった…すまないユノ…あいつの悪い噂は聞いてたから、おまえがアメリカ に行くときは、万全の体制で行かせたんだ。屈強なボディーガードが四六時中ずっとつい てただろ?」 「…あ  そういえば…」 「まさか、こっちに来てチャンミンにまで手を出すとは…油断したよ…俺のミスだ。すま ない、ユノ。おまえのおかげでチャンミンが無事で良かったよ」専務が心底ホッとした様 にそう言ってくれたので、ユノは安心した。 「あいつは腕利きだけど、評判はすこぶる悪かったんだ。これからはあいつとは係らない ようにするから、仕事の事は心配するな。おまえが気にしてたって、マネージャーが言っ てたけど、そんな事はおまえは気にしなくていいんだから」 「専務…  ありがとうございます!!!」