ユノは韓国マイケル追悼公演を目前に控え、小さな頃からの憧れだったマイケルジャク ソン…その彼の追悼公演の主役というプレッシャーからか、イライラする日々が続いてい た。  アメリカ人スタッフとのコミュニケーション不足…少し自分を見下したような態度に今 まであまり感じた事のなかった、不安と苛立ちを経験していた。  楽しい事や嬉しい事は楽しげに何でも話すユノだが、辛い事、苦しい事になると一気に 寡黙になるユノだった。  チャンミンはユノのそんな様子を心配して、気をもむ日々を過ごしていた。 「ただいま」  深夜遅くにリハーサルを終えて帰ってきたユノの声は暗く沈んだものだった。 「おかえり」努めて明るくチャンミンは答える。 「ヒョン、今日は参鶏湯作ってもらって、持って帰ってきたよ。少し食べる?」  可愛い笑顔でそう言うチャンミンに、ユノは心がポット温かくなり、思わず抱き寄せ頬 にキスをした。 「ありがと、チャンミナ…でも疲れたから風呂はいって寝るよ…」 「…うん…じゃぁー朝食べて元気出してよ…寒くなってきたから、ちゃんとお湯に入って 温まらなきゃダメだよ」そう言うチャンミンに 「…わかってるよ…」小さな声でうるさいなぁ〜という感じでユノは答え、浴室へ消えた。 …しまった…  口うるさく言っているつもりではなく、心配で言ったのだけど、今はあ まりゴチャゴチャ言わない方がいいな…  イライラするユノを感じているチャンミンはそう思った。  しばらく、ただついているTVをボーっと見ていたチャンミンはふと 「ヒョン、遅いな…いくら長風呂だからっていっても長すぎないか?」心配になったチャ ンミンは浴室の外から声をかけた。 「ヒョン!ヒョン! 大丈夫?」 ……    返事がない。  慌てて、ドアを開けると、浴槽の中に口元まで沈み込んで、眠っているユノがいた。 「ヒョン!ヒョン!こんなとこで寝てたら、溺れて死んじゃうよ!ヒョン!起きて!」  チャンミンはユノの肩をゆすって叫んだ。  ハッと目を覚まし、立ち上がったユノは 「あーわりい、わりい、寝ちまってたな」 そう言って浴槽から出て、外へ出ようとした瞬間、フラフラと倒れそうになった。 そばにいたチャンミンが咄嗟に腕を掴み、事なきを得たが一人だったらと思うと、チャン ミンは血の気が引いた。  バスタオルでユノをくるみ、抱きかかえて寝室へ運んだ。  ベッドにドサッと腰をかけて、ユノは 「のぼせただけだから。チャンミナ大丈夫だから」そう言いながら、また立ち上がり、歩 きだそうとした。  すぐさまチャンミンが止め、ユノを座らせた。 「どこ行くんだよ!そんなフラフラしてんのに」 「いや…水飲もうと思って…」 「取ってくるよ!!!!こんな時に遠慮なんかすんなよ!」 「わりー」 全く…いつも偉そうに命令するくせに、こんな時に遠慮なんかして! そう思いながらも「ほんとに大丈夫かな〜ヒョン」心配なチャンミンだった。 「アー疲れた」体も髪も良く拭かずにベッドに横になるユノ 「ちゃんとこの大役やれるかな… バカにしてるあいつら見返す事できるかな…」 ユノはいつになく弱気になっていた。 「はい、ヒョンお水…前にオモニ(お母さん)が送ってきてくれた漢方薬、これも一緒に 飲んどきなよ。ちょっとは元気になるよ」チャンミンはミネラルウオーターと漢方薬を渡 した。 「おまえにって送ってきてくれたのに…  悪いな…」そう言って、一気に飲み干した。 「ヒョン、ビショビショのままじゃないか…ちゃんと拭かないと風邪ひくよ」 そう言うと、タオルでユノの体と髪を拭き始めた。  じっとうつむきされるがままのユノだった。  チャンミンはユノの下着とパジャマを探し 「はい、ヒョン」と渡す。 「うん…  」と黙ってユノはそれを着る。  ベッドの端に腰かけたユノの前に立ち、チャンミンは上からふわりとユノの背に手を回 し、片手でユノの頭を引き寄せた。 「ねぇ〜ヒョン、僕ヒョンのマイケル …ユノケルが楽しみでワクワクするよ。きっと世 界中のユノペンが楽しみにしているよ。いつものようにカッコよくて、自信満々でドヤ顔 してるヒョンの顔が目に浮かぶよ…僕、ヒョンのダンスが大好きだよ。いつも見とれちゃ うんだ」  チャンミンはそう言って、ユノの頭にキスをした。 「チャミナ…」ユノはチャンミンの腰に手を回し、引き寄せられたまま顔を埋めた。 ありがと…チャンミナ…頑張るよ… おまえが好きな最高のダンス見せてやるよ!  そう心の中で誓うユノだった。  コンコン   コンコン…  ユノの咳き込む声でチャンミンは跳び起きた。 「ヒョン!どうしたの?のど痛いの?」  隣のベッドで寝ているユノを覗き込むと、真っ赤な顔をして、ハァーハァーと肩で息を している。 「うわ〜!ヒョン!熱でたの!??」