チャンミンの精神状態も安定し、ようやく普通の笑顔が取り戻せた頃、ユノにマイケル 追悼公演の出演依頼がきた。  ユノは尊敬していた、マイケルジャクソン追悼公演と言う事でもあり、毎日遅くまで練 習する日々が続いていた。  チャンミンはこれといった大きな仕事はなかったが、これからユノと二人で東方神起を 続けていくには絶対的に自分のダンスの力不足を何とかしなければ、とひたすら体力作り とダンスの基礎からの練習を積み重ねていた。  ユノのアメリカ出発前夜だった。 「ヒョン、忘れ物ない?ヒョンは必ず何か一つは忘れ物するんだから…気をつけてよ。ち ゃんと洋服たたんでいれたの?また出した時にしわくちゃになっちゃうよ…」 「チャミナ…お前最近なんか嫁さんみたいだな…」そう笑って、チャンミンの頬をつねっ た。 「あーアメリカかぁ〜こんな事なら、ユチョナにもっとちゃんと英語習っときゃ良かった なぁ〜」  アメリカ行きが決まってから、悪びれた様子もなく何度もそう言うユノに、微かな嫉妬を 感じていた。  5人でいた時には常に一緒にいたユノヒョンとユチョンヒョン…同じ部屋だったし…よ く一緒に出掛けてたし…ずっとそばで見てたから、わかるけど異常にベタベタしてたよな その時はそんな風に思わなかったけど、今自分がこうなって、ユノヒョンは絶対男と初め てじゃないと思うと…ユチョンヒョンと!?  悶々とそんな事を考え、ユノにも問いただせず、ユノが”ユチョン”と口にするたびチ クチクと胸が痛んだ。 「楽しみだなぁーどんなダンスの先生だろ?チャミナ何かアメリカで欲しいもんある?」 「何もいらないよ!ヒョン、ちゃんと布団かぶって寝なきゃダメだよ。ヒョンはすぐ風邪 ひくんだから」 「ハッハッハ…わかったわかった。ほんと嫁さんだな」ユノは楽しそうにチャンミンを見 て笑った。 「ヒョン…  あのさ…  女みたいって言われそうだけど…これ持って行って」 はい、とチャンミンから渡された物を見ると、指輪だった。 「ワォ!いいじゃん!これおしゃれだな。もしかしてペア?」 ユノは嬉しそうに指にはめたリングを上にかざして、見上げながら聞いた。 チャンミンは顔を真っ赤にして「うん、持って行ってくれる?」と聞いた。 「もちろん!ありがと!チャミナー」ユノはそう言って、長い間リングをかざしてニヤニ ヤと見上げていた。  そして、「さぁー風呂はいってこよ」まだニヤニヤとリングを見ながら、浴室へ消えた。 「良かった。ヒョン気に入ってくれて」チャンミンはホッとして、ユノがリビング一杯に 散らかした荷物を片付けだした。  ソファーの上に大量に出された服の下から、パスポートと手帳が出てきた。 「あーあ、ヒョンこんな大事な物まだこんなとこに置いてるよ」  そう言ってパスポートと手帳を持ち上げた瞬間、何か小さな物がヒラヒラと下に落ちた。 「あれ?今何か落ちた?」ソファーの下に跪き、何かな?と探した。 あった。これだ。 拾い上げて、よく見たチャンミンは息が止まりそうになった。 随分と若い時のユノとユチョンがキスしているプリクラだった。 チャンミンはドサリとソファーに座り込んだ。 やっぱり…  やっぱりそうだったんだ… どれ程の時間そうしていたのか、浴室の方でバタンと音がして、ようやくチャンミンは我 に返った。 「あ…片付けなきゃ…」プリクラを手帳に挟み、テーブルの上に置いた。 「チャンミナ〜お先〜おまえも入ってこいよ!」ユノはまだリングをかざして見ている。 「ん…  なんか頭痛いから、今はいいや…」 チャンミンがそう言うと 「え??」ユノはチャンミンに駆け寄りおでこに手を当て、 「熱は?風邪?薬飲んだ??」とチャンミンの顔を心配そうに覗き込んだ。 「大丈夫だよ…ヒョン。寝れば治るよ」 「明日出発なのに大丈夫かよ…マネージャーさんに言っておくよ。酷かったら病院行けよ 「フフフ…大丈夫だよ。ちょっと頭痛いくらいで、大袈裟だなーそれよりヒョンそんなか っこでウロウロしてたら、ヒョンのほうこそ風邪ひくよ」ユノはバスタオルを腰に巻いた だけの姿で立っていた。 「そりゃ、だって明日から俺一人でアメリカだし、すぐまた脱いじゃうだろうと思ったん だけど…」そう言って、心配そうにチャンミンの顔を両手で挟んだ。 「今は頭痛いから…でも薬飲んだし… すぐに治るかも…」 「じゃーとりあえず、服着て、荷物つめるよ」ハハハと少し照れたようにユノが言った。 「ちょっと横になるね…ヒョン忘れ物ないようにね。パスポートと手帳もそこに置いて あったよ」 「あーわかった」ユノは服を着るために部屋へ向かった。  チャンミンはため息をつき、さっきのプリクラの二人を思い出した。  ちょっと寝よ。しばらく帰らないユノを思うと、このまま朝を迎えるのは寂しい。 そうは思うものの、二人のキス写真はチャンミンにとって、かなりショックだった。 昔の事だし… そうだよ…随分若い時だった、もしかしたら、写真撮影の時のかも… ジェジュヒョンとユノヒョンもそんな写真撮ってたもんな。 ヒョンは明日からアメリカ行って、大変なんだから、気持ちよく送り出してあげなきゃ… こんな昔の事でやきもちなんか妬いて…ヒョン指輪あんなに喜んでくれたんだから。 今はおまえだけだ。って…  ベッドに横になっても、その事ばかりを考えて、眠気などやってきそうにもなかった。 やっぱ、シャワー浴びて来よ。  ユノは荷物と格闘していた。 「あーもう何回やってもこれは面倒くさい!チャンミナが元気だったら、詰めてもらうの に!」とブツブツつぶやいている。 「ヒョン、ちょっとましになったから、シャワー浴びるよ」チャンミンは少し照れたよう にそう言った。  ユノはパッと明るい表情になり、「良かった。じゃぁ早くこれ片付けなきゃな」 スーツケースの蓋をギューギューと押さえて閉め、リュックに手帳とパスポートを入れた。  チャンミンはさっきの写真を思いだし、パッと目を逸らせ浴室へと向かった。  頭からお湯をかぶり、「昔の事昔の事…」何度もそう繰り返した。  チャンミンがパジャマを着て、髪を拭きながら寝室に入ると、ユノがベッドの上で横に なり、手をかざしてまた指輪を見ている。 「ヒョンはあーいうとこほんと子供みたいだな」チャンミンはフフっと下を見てほほ笑ん だ。 「チャンミナ、頭治った?」ユノは起き上がって、自分の前にチャンミンを座らせた。 「うん、大丈夫」ほんとは頭なんか痛くなかったのに、こんなに心配させて悪かったな。 そう思い、チャンミンは俯いた。 「痛いなら、ムリしなくていいよ…残念だけどさ… アメリカ遠いし、寂しいけどさ…」 そう言いながらもユノは、チャンミンのパジャマの上着を肩からずらして、後ろから肩に キスをした。 「痛い?治った?どっち?」首すじから肩に舌を這わせる。 「俺、チャミナのここが好き」そう言って、今まで痛い?と心配していた事も忘れたよう に、執拗にそこを舐めた。 「ッハ…  ン… 僕は… そこが一番   ン…嫌いだよ、 ア…何を着ても  ン…  女みたいになって」 身をよじらせ、チャンミンは言った。 「なんで?こんなに綺麗なのに」指でそっとなぞる。  ゾクゾクとした快感がチャンミンに沸き起こる。 「僕はヒョンの逞しいからだがほんとに羨ましいよ」そう言い返したかったが、言葉にな らなかった。 ハァー …ック …ウ  抑えきれない吐息がチャンミンの口から洩れた。 我慢できずにチャンミンは振り向いて、ユノの唇をむさぼった。 「可愛い。好きだ、好きだよ チャミナ」 そう囁きながら、舌を絡め、チャンミンの口の中を蹂躙した。 「ほんとだよね?ヒョン…ほんとにそうだよね?」チャンミンはそう心の中で叫んだ。 どうしても消えない不安… 頭に残る二人の写真… 熱く、激しく抱かれているのにチャンミンの心は満たされなかった。  ユノはチャンミンの胸元にきつく吸い付いた。 チャンミンは思わず体を離して立ち上がった。 「ヒョン!やめろよ!そんなとこに跡つけたら、Tシャツも脱げなくて…この前慌てて、 汗びっしょりのをまた着たんだから!」怒った表情でそう言った。 「あ、ごめんごめん、つい可愛くて…じゃぁここならいいかな…」 ユノはそう言って、またチャンミンを引き寄せ、今度はスラット伸びたチャンミンの細い 脚を開いた。そして、チャンミン自身にほど近い内腿に、強く吸い付いた。 「ここならいいだろう?」 何か所にもチューチューと吸い付き跡をつけ、楽しそうにチャンミンの顔を見上げた。 呆れたように見下ろすチャンミンと目があい、二人で噴き出した。  そして、ユノはチャンミンを後ろから抱きしめた。 チャンミンの背中に顔をうずめ、 「チャンミナ…俺頑張ってくるよ…尊敬するマイケルジャクソンの足元にも及ばないと思 うけど精一杯頑張ってくる。だからチャンミン応援してくれよな。この指輪おまえだと 思って頑張るよ。ありがと」そう言って愛しげに指輪にキスをした。 「うん、応援してる。ヒョンほんとに良かったね。僕張り切って踊るカッコいいヒョンが 目に浮かぶよ。カッコいいだろうなぁ〜早くみたいよ」 チャンミナ… ユノはチャンミンをギュッと抱きしめた。 チャンミンの心が少し温かく軽くなった。