身をよじるようにして、離れようとするチャンミンをなおも強く抱き寄せ、ユノは耳か ら頬へ頬からくちびるへとキスを落とした。 「好きだよ」かわされるくちづけの合間に囁かれる甘い言葉。チャンミンは恥ずかしさの ためにユノの腕からすり抜けようとしていたが、降り注がれるくちづけと、甘い囁きに酔 いしれ、体から力が抜けていき、首すじを這うユノの唇がチャンミンの快感を呼び起こし た。  しかし、ユノの手がチャンミンの服のボタンに手がかかった瞬間 「ヒョン!」 ドンとユノを押しのけた。 「なに?どした?」 「ヒョン…  無理だよ… これ以上はダメだよ…」 「なんで?」  なおもチャンミンを引き寄せ、顔を近付けキスしようとしながらユノは聞いた。 「なんで?って…だ、だって、お…男どおしだし…」 真っ赤な顔で俯いたまま、チャンミンはそう答えた。 ユノはプッと噴き出し 「チャミナ可愛い…そんなにウブだったっけ?いやらしいDVDばっかり見てたわりに」 そうユノに笑われたチャンミンはなおさら顔を真っ赤にして、ユノから離れた。 「何だよ!笑うなよ!そんなの普通はそう思うじゃんか!じゃぁヒョンは知ってんのかよ 経験あるのかよ!…そっちじゃなかったじゃんか!女の子とつきあってたじゃん!」 「うるさいなぁ〜好きなんだからいいじゃん!!」ユノはじれたように、腕をつかむ。 チャンミンはその手を振りほどいた。 「僕だって、ヒョンが好きだけど…だけど…」そう言いながら後ずさる。 「ならいいじゃん」 なおも近づこうとするユノ… しかし「やっぱり、ムリ…」そう小さく呟いて、チャンミンは部屋を飛び出してしまった。 「チャンミナ!!!」出て行ってしまったチャンミンを見つめ、フーーーーーーッと大き く息をつき、ユノはドサッとソファに身を沈めた。 「あいつ、あんなにウブだったっけ?? ………  俺もちょっと焦りすぎたかな… 」 「もしもし…  キュヒョン?今から逢えない?」 「うん… 悪い…  」  チャンミンは親友のキュヒョンを呼び出した。いつもの店で待ち合わせ、やおらビールを あおるチャンミン。  遅れてやってきたキュヒョンは珍しく酔ったチャンミンに驚きながら、席に着いた。 「珍しいな…おまえがこんなに酔うなんて…どした??」 「よ!キュヒョンちゃ〜〜ん」 酔ったチャンミンはテーブルに突っ伏したままそう言った。  キュヒョンもチャンミンが苦しみ、落ち込み、やつれていく姿を見ていたので、こんな 急な呼び出しにもこたえてくれるのだ。  最近ちょっと元気になってきてたのに… またなんかあったのかな…  キュヒョンは胸を痛めた。 「何があった?」 「べつに…  何もないけど、ちょっとおまえの顔が見たくなっただけ」 「嘘つけ!何だよ、水くさいな、言えよ!」 真剣な表情で心配そうにキュヒョンにそう言われると、チャンミンはすべてを打ち明けて すっきりしたい気分だった。 …こんな事言えるわけないよな… 言ったら軽蔑されるかもしれない… 軽蔑しなくてもへんな目で見られるのは嫌だし… 「ちょっとユノヒョンと喧嘩したんだ」チャンミンはそうつぶやいた。 「え?ユノヒョンと?珍しいな… おまえがヒョンと喧嘩したの?お前ヒョンに言い返し たり出来るの?何でも言いなりなのかと思った…」  チャンミンはさっきのユノとの事を思いだし、カッと熱くなり 「何でも言いなりな訳ないだろ!それにヒョンはちゃんと僕の言う事も聞いてくれるし… 強引なとこもあるけど、僕の事一番心配してくれるし…」 興奮してそう叫ぶチャンミンにキュヒョンは驚いて 「そうだよ。わかってるよ、誰が見たって、ユノヒョンが一番おまえの事心配して…守っ てるって… そんな事言われなくても、みんな知ってるよ。だから余計に喧嘩したなんて 珍しいと思って…それもこんなに酔うくらいにさ…」 「……… ずっと一緒にいたら、喧嘩する事もあるさ………」 「そりゃそうだろうけど…」 「飲もうよ!なぁ!飲も!かんぱーーい」 「だいじょうかよ〜」 フラフラになったチャンミンを抱えて、キュヒョンはユノの待つ部屋まで送ってきた。 「悪かったな、キュヒョン。おまえも忙しいのに」 ユノはフラフラに酔って、意識のないチャンミンをキュヒョンから引き取り、ベッドに運 んだ。 「ユノヒョン…あの…年下の僕がこんな事言って、あれなんですけど…チャンミンと何か あったんですか?あいつがこんなに酔うのなんて珍しいし、ヒョンと喧嘩した、って言う 割に酔いつぶれてからはずっと「ヒョン、ヒョン、ユノヒョン」って悲しそうにうわ言み たいに言ってて…」 「チャンミナ…」ユノは心臓が脈打つのが早くなるのを感じて、胸をギュッとつかんだ。 「キュヒョン、大丈夫だよ。ちょっとこれからの事で意見の合わない事があって、言い争 いになったから、俺がきつく言い過ぎたんだ。明日、ちゃんと謝るから、心配しなくてい いよ」 「…そうなんですか?…そんな事ならいいんですけど…これ以上あいつには傷ついて欲し くないっていうか…すみません。ヒョンだって大変なのに」  キュヒョンはそう言うと、ペコリとお辞儀をして、帰って行った。 「チャンミナ…おまえに”ヒョンは経験あるのかよ!?”ってへんな奴を見るような目で 見られて正直ショックだよ。芸能界は厳しい世界なんだよ…そんな奴もいっぱいいるんだ よ…可愛いチャンミナ…」  ぐっすりと眠るチャンミンのベッドに腰かけ、ユノはチャンミンの髪にふれようとした 手を引っ込めた。  ずっと守ってきたのに、俺が汚しちまうとこだったんだな… ッフ 何やってんだか…  チャンミンはズキズキと響く頭と、ムカムカとする気分の悪さで眼が覚めた。 「ん??確か…キュヒョナと浴びるほど飲んで…  そこから意識ないや…」  そっと隣のベッドを見ると、そこにユノの姿はなかった。居間に向かい、ユノを探す。 電気はついたまま、TVもついたままでソファーに横になるユノがいた。ソファーの下に はミュージカルの台本が落ちている。 「ヒョン…またこんなかっこのまま寝て…風邪ひいちゃうよ…」  チャンミンは寝室から毛布を持ってきてユノにかぶせ、じっとユノを見つめた。   「ヒョン…ヒョンが好きだ…もしヒョンが女の子と付き合う事になったらと思うとたまら ない…嫌だ…ヒョン…あの時僕が経験あるのかよ!?って言ったら否定しなかったな… そうなのかな? ヒョン男の人とも?? なんか悲しそうな目だった… 僕はどうしたいんだろ? 嫌じゃないんだ…ヒョンに触れられて、キスされて、嫌なんか じゃなかった。それどころか…自分を見失いそうで…このまま進んだらどうなるか怖くて 自分が自分じゃなくなりそうで怖くて…ほんとはもっと触れて欲しくて、もっともっと」  カッと熱くなった体を持て余し、チャンミンはベッドに戻った。 「逃げ出したりして、ヒョンは怒ってるかな…好きだって言ってくれたのに、ヒョンが僕 の事好きだって言ってくれたのに…なんで逃げ出したりしたんだろ…」  ほとんど寝れないまま、小鳥のさえずりが聞こえてきた。  チャンミンはそっと起きだして、朝食の準備をした。  ユノが軽く咳をしながら、そこへ入ってきた。 「チャンミナおはよう」何事もなかったかのようにまるで今まで通りに、ユノはチャンミ ンに挨拶した。  いつもと変わらないユノにホッとして、チャンミンは 「ヒョン、おはよう… 咳して… 大丈夫?また風邪ひいちゃったんじゃない?」 「大丈夫だよ。昨日毛布かけてくれたんだな。サンキュー」そう言って、用意された朝食 を何事もなかったように食べ出した。 「もうすぐミュージカル始まるね。どう上手くいきそう?」ユノの向かいの席に座ったチャ ンミンは聞いた。 「上手くいくかどうかはわからないけど、周りの先輩たちに教えてもらって、何とか頑張 るよ」 「僕も観に行くよ」 「ああ」 嬉しそうにユノはチャンミンを見て笑った。  二人は昨日の事など何もなかったかのように、あえて何も言わなかった。 「じゃぁ、チャンミナ行ってくるよ。おまえも気を付けて行けよ」 「うん、ヒョンありがと」チャンミンはじっとユノを見つめた。 今までみたいに触れて欲しい… ヒョン!怒ってないなら…お願いだよ…  チャンミンにじっと見つめられたユノは思わず、手を伸ばしてチャンミンの頬に触れよ うとした。が、グッと堪えて、軽く頭をポンポンと叩いた。  チャンミンはホッとしたような物足りないような、嬉しいような、悲しいような、そん な色々な自分の感情に翻弄された。 「…いってらっしゃい… ヒョン頑張って」  それぞれの想いを抱え、二人は目の前の仕事をがむしゃらに頑張った。  ユノは舞台を目前に控え、徹夜がつづき、ゆっくりチャンミンと話す暇もなかった。 そんなある日 ガチャ…深夜にユノの帰る気配を感じ、チャンミンは目が覚めた。 「あ!ヒョンだ」 飛び起きて玄関に向かう。 「お帰り!ヒョン!」 「うわ!びっくりした。チャミナどうした?寝てなかった??」驚いて聞くユノに 「ううん、音が聞こえて目が覚めた」はにかむようにチャンミンは答える。 「あー悪かったな…起こしちゃって…」部屋に入りながらユノは言った。 まとわりつくように歩くチャンミンは 「違うよ、ヒョン。ずっと話してなかったから、話たかっただけ」 そう言うと、チャンミンはそっとユノの腕に触れた。 しばらく間があって、 「何だよ〜チャンミナ〜またそんな可愛い事言って、俺を誘うのか?で、すっかりその気 にさせといて、逃げちまうのかよ?」ユノはそう笑いながら言って、チャンミンの頬を両 手でつねった。 「あ……  」チャンミンは真っ赤になってユノから手を離した。 「…… ヒョン ごめん … そんなつもりじゃ … 」 「冗談だよ!もうあんな事しないから心配すんな」ユノはそう言って、チャンミンの髪を クシャクシャと撫でた。 ドキン!チャンミンの胸が高鳴った。 ヒョンに触られるとどうして、ドキドキするんだろ… なんでこんなに嬉しいんだろ… ヒョン…ごめん、嫌だったわけじゃないのに… ただびっくりして… ちょっと怖くて… 女の子好きだった時こんな気持ちになったかな… 「チャンミナ…どう?レッスンは順調?」 「うん、それがね、ヒョン今日さぁ〜」 チャンミンは久しぶりに話せる嬉しさで顔をほころばせた。 無事にユノの千秋楽が終わり、再び二人の練習が始まった頃、ある撮影現場の廊下を二人 はスタッフと共に歩いていた。そこへ向こうから女優のキム・ソギョが駆け寄ってきた。 「まぁお久しぶり!ユンホ君にチャンミン君、しばらく会わない間に随分男らしくなっち ゃって」 「ソギョ先輩、ご無沙汰しておりました」二人は丁寧にお辞儀をした。 ひとしきり、昔話をまくし立てた後、 「久しぶりにお食事でもいかがかしら?ユノホ君」ソギョはユノの近くにより、少しトー ンを落として、囁いた。 チャンミンは驚いて、ユノの顔を見た。ユノは一瞬曇った表情を見せたが、すぐに 「チャンミン先に行って」と言い、ソギョの方に笑顔を向けた。 仕方なくチャンミンは「はい」と答え、ソギョに挨拶をして、先に撮影現場へと向かった。 「久しぶりに… って僕はソギョ先輩と食事なんかした覚えない。それにあの言い方は明 らかにヒョンだけを誘ってた…昔食事した事あったのかな…ヒョンは年上にも、もてるか ら… 食事くらい… 行ってるよな… 食事くらい…」  チャンミンはソギョのユノを見るねっとりと絡むような熱い視線を思いだし、イライラ した。 「どうしてたの〜〜〜ユンホ君… 大変だったわね〜色々と…5人あんなに仲良かったの にね〜」ソギョは誰もいなくなった廊下でユノにピッタリ近づき、腕に触れながら言った。 「久しぶりに逢えたんだから…お食事しましょうよ…いつものお部屋とっておくわ」  ソギョはユノの耳元で囁いた。 「先輩… すみません。僕もう…そういうのは…」 「まぁ〜ユンホ君、せっかく男らしく、大人になったあなたに逢えたのに、そんながっか りするような事言うの?彼女でもできた?」 「ええ…  彼女っていうか…  好きな人が出来たんで…」 「フフッ 好きな人?まだお付き合いしてないの?」 「… はい … 気持ちはわかってるんですけど…  まだ…というか何というか…」 「おかしい〜!あの強引なユンホ君が!?押し倒しちゃいなさいよ」  ケラケラと笑いながらソギョは言った。 「押し倒したんですけど、逃げられちゃって…」  照れくさそうにそう言って、ユノも笑った。 「まぁ〜何それ!?ユンホ君から逃げちゃうこもいるのね」  フ〜とため息をつきソギョは 「わかったわ。じゃあそのウブなお嬢さんに免じて、お食事だけで許してあげる! それならいいでしょ?」そう言うと、ニコっと笑った。 「はい、ソギョ先輩ありがとうございます」  少し遅れて撮影現場にやってきたユノに、すぐさまチャンミンは 「ヒョン、先輩と食事行くの?」泣きそうな顔をするチャンミンの方を見ずに ユノは「ああ、行くよ」 淡々と答えた。 「ヒョン…ソギョ先輩と今まで食事した事あったんだ…」 「ああ、何回かね…   さぁ!撮影始めましょうか〜」ユノはチャンミンの言葉を 遮るように、スタッフに向かって、大きな声でそう言った。  写真撮影の仕事が終わり、帰る準備をするチャンミンにユノは 「先輩と食事行ってくるから。チャンミナ先に帰っといて。遅くなるかもしれないから、 心配すんなよ」そう言って、優しくチャンミンの手を握った。 「うん」小さな声でそう答え、聞きたい事、言いたい事は全部飲み込んだチャンミンだっ た。  一人部屋で待つチャンミンはイライラする気持ちを落ち着かせようと、音楽を聞いたり ゲームをしたり、本を読んだり、色々試してみたが、どれ一つ成功するものはなかった。 「フーーーーーーー」何回ため息をついても、時計の針は中々進まない。 「遅いな…ヒョン。食事だけなのに遅くなるかもしれない…なんてさ…ソギョ先輩綺麗だ もんな…グラマーだし…あれは絶対誘ってる雰囲気だったよな…抱いてんのかな…ヒョン ハハハ!!!笑うよな!普通美人でグラマーの先輩なら「俺もやりてー」ぐらい思うのに 俺はなんで逆なんだよ!」  チャンミンは自分の頭を両手で掻きむしった。  ユノは帽子を深くかぶり、マスクをしてホテルに入った。最上階のスイートルーム…  若気の至りで誘われるままにそういう関係になり、付き合うというわけではないが逢え ば誘われてそれにこたえる…そんな間柄だった。 「すみません、先輩 遅くなって」 ユノはそう言って部屋に入り、大きく胸の開いたドレスを着たソギョを見て驚いた。 「先輩、それ目の毒ですよ」苦笑いしながらユノはそう言った。 「目の保養の間違いでしょ?とっても素敵な男性になったユンホ君に敬意を表したのよ」 「すみません、僕こんなかっこのままで…」恐縮した様子でそう言うユノに 「いいのよ、あなたは何を着ていても素敵だわ」色気たっぷりの表情でソギョはユノを見 つめた。 「さぁお食事にしましょ… お腹すいたでしょ?」」  チャンミンのイライラは最高潮に達し、ベッドにむかって、何度も枕を投げつけた。 「ちくしょーーーー!いつまで飯食ってんだ!さっさと帰ってこいよ!バカユノ!」 「好きだって言ったくせに!猫撫で声で好きだよって何回も言ったくせに!」  そう叫びながら、今度は枕を殴り始めた。 「先輩ごちそう様でした。チャンミンが心配するといけないので、そろそろ帰ります」 そう立ち上がったユノにソギョは慌てて近づき 「ユンホ君、ほんとに帰るつもり?」とユノの手をとる。 「はい… 先輩… その約束でしたよね?」ソギョの手を離そうとしたが、ソギョはその 手を自分の大きく開いた胸元へ引き寄せた。そして、顔を近付け 「ユンホ君を振りほどいて逃げちゃうような、そんなおバカなお嬢さんの事は忘れて、又 私と楽しく遊びましょうよ」そう言って、キスをした。ユノはしばらくはそのキスを受け 入れていたがソギョの肩を持ち、そっと引き離した。 「先輩、すみません。もうこういうのは終わりにさせてください。お願いします」 真剣に頭を下げてそう言うユノにソギョは 「どうして?誰にも言わなきゃわからないわよ…今までだってずっとそうだったじゃない 「すみません、もう前とは違うんです…」ユノは頭を下げ続けた。 「そんなにそのお嬢さんが大事なの?」 「はい、とても」顔をあげて、ソギョを見てユノは言った。 「わかったわ… もう私はお役ごめんなのね… また新しい可愛い子探すわ」  ソギョはそう言って、ユノに背をむけた。 「すみません。先輩… 失礼します」  ユノは帽子を深くかぶり、マスクをして、スイートルームを後にした。 「ただいま」  多少の後ろめたさから、小さな声でそう言って、入るユノだった。  灯りの灯る方に行くと、キッチンのシンクをゴシゴシとこするチャンミンがいた。 「何してんの?チャンミナこんな時間に…」 「別に… これが一番イライラ解消にはもってこいだったんだよ!遅かったね、ヒョン」 「遅くなるかもって言ってたじゃない。先に寝てればよかったのに」  チラッとユノの方を見て、まだゴシゴシとシンクを擦りながら 「くちべについてるよ」 チャンミンがそう言うと 「え?」と慌てて、口を擦るユノ… 「ハン! やっぱりキスしたんだ。そんな簡単な嘘にひっかかるなんてバカみたい」 「誰がバカなんだよ!」カッとなって怒るユノに 「ユノヒョンに決まってるだろ!デレデレしちゃってさ!嬉しそうに食事行ってグラマー な先輩抱いてきたんだろ?大満足でしたか?」ユノを見ずにチャンミンはそう言った。 「おまえなぁ!俺がどんな想いで振り切ってきたかわかってんのかよ!!」 そう怒鳴るユノをチャンミンはゴシゴシ擦る手を止めて見た。 「好きだって言う割に逃げ出すかと思ったら、今度は女に対してやきもちかよ! おまえはいったい俺にどうして欲しいんだよ!お手々繋いで仲良しごっごでもしてりゃい いのか!?おまえはそれで満足なのか!?おまえの好きはそんなもんなのか!?俺は違う ね、おまえが好きだ、全部、全部だよ!おまえの全部が欲しくてたまらない。そうさ、バ カだよ。あのままグラマーな先輩抱いてきた方がまともだったよ」 ユノはそう言って、部屋を出て行こうとした。 「待って!」チャンミンは慌てて、ユノを追いかけ後ろから抱き付いた。 「ごめん、ヒョン。ごめんなさい。ヒョン 行かないで。お願い、行かないで!もう逃げ ないから…僕もヒョンが好きだよ、全部、全部好きだよ…そんなの最初からわかってたん だ。ただちょっと怖くて…ビックリしただけなんだ…だから、ヒョン… 行かないで」 ユノは振り向いて激しくチャンミンの唇をふさいだ。 「もう逃げるなよ!」